第118話 白馬元気VSアタック・オン・リコ
巨大化した白馬が魔王軍の屈強な兵士たちをなぎ倒しながら迫りくる。
目指す先がアタック・オン・リコなのがもうやりきれない。
白馬も結構メイク・アン・アタック・オンしているのに。
「ではでは、あたしのスキルをー……。おー? ねーねー、六駆くん。あたしの強いスキル、弓がないと撃てないのばっかなんだけどー」
「ああ、大丈夫ですよ。弓を持ってる感じでレバー握って、矢を射る気分でスキル発動させてもらえれば、なんかズガーンと出ますから!」
六駆の雑な説明を「にゃるほどー」と理解できるようになれば、もう逆神六駆検定1級も狙える器である。
ただし、その検定に価値を見出す人間がいればの話だが。
「ぶぅー。いいなぁ、クララ先輩。わたしも六駆くんに頼られたかったなぁ」
「ああ、莉子! 飛竜隊のみんなに『
「やりましたぁー。どうしてわたしが後方支援で、クララ先輩が六駆くんから直々に手ほどきを受けているのかなぁ? 弟子はわたしだよぉ!! ずーるーいー!!」
逆神六駆検定、特級の持ち主がやって来た。
莉子は飛竜隊の『
「どんな感じ? みんな回復した?」
「
「ああ、やっぱりか。味にこだわりたかったんだけど、南雲さんがさー。飲めりゃ良いんだよ! とか言うんだもん」
「うわぁ。それはちょっとナシかなぁ。やっぱり味って大事だよね!」
六駆と莉子がイチャコラやっている裏では、クララが大活躍していた。
なにゆえそのシーンがカットされているのかは、現在調査中である。
「みみっ! 椎名先輩、すごいです! 強弓『サジタリウス』のスキルも撃てるです!!」
「にゃははー。こんなに活躍の場を貰えて、あたしは幸せ者だなぁー!」
その活躍を、今のところ誰も知らない。
「でも、まだ巨人が止まらないです」
「だよねー。だって、ガード固めて、しかもこっち向いてんだもん。隙がないよねー」
クララの『
だが、白馬元気が止まらない。
もうアタック・オン・リコとの距離は3キロほどまで迫って来ていた。
そろそろ南雲か六駆辺りが動くかと思っていたところ、予想外の助っ人が名乗りを上げる。
「『
ロリっ子魔王様、よもやの不意打ちだった。
白馬も想定外のところから急に出て来た岩の牙が足に刺さり、「ぐぉおぉぉぉぉぉぉっ」と実に痛そうな唸り声と共に立ち止まる。
奇襲作戦は成功したのか。
そんな事はない。
魔王・ファニコラ、これはよろしくない。悪手も悪手である。
満足に扱えるスキルが1つで、さらに陽動役をこなせるフィジカルもないファニコラが不用意に攻撃を仕掛けたものだから、白馬の目標が彼女に変更される流れは実にスムーズだった。
「ひぃ、ひぃぃっ!? どうしてこっちに来るのじゃ!? ダズモンガー! 助けてぇ!!」
今回の戦いで未だ良いところのない虎の武人に悲鳴が届く。
だが、彼も動けない。
「ぬぉぉぉぉっ!
ダズモンガーくん、六駆の作った飲む
多分、今回の彼のシーンはこれで終わりだろう。
そう予感させる役者が揃った。
「みみみっ! ファニさん! ここは、芽衣が引き受けたです!! みみっ!!」
「め、芽衣ぃ! 助かるのじゃぁ! 妾は少しでも役に立ちたいと思って……!」
「その気持ち、とってもよく分かるです! みみみっ! 『
陽動役なら、もはや反乱軍の中でも随一と呼んであげても良いだろう。
彼女の名前は木原芽衣。
今、300人に増えたところだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ぐぉおぉぉぉぉぉっ! なんだこのガキ!? 鬱陶しい!!」
白馬、お前、喋れたのか。
てっきり唸り声だけで感情表現をすると言う高度なテクニックを要求してくる難物だと思っていたのに。
「みみみみみっ! この、大きいだけで役に立たない、ええと、バカ! バカです!! バーカ!! みみみみみみみっ!!!」
芽衣は人を
だからシンプルに「バーカ」と言いながら、白馬の足元をちょこまかと動き回る。
300のちっこい女の子が。
これはもう、想像するまでもなくウザったい。
そっちにばかり気を取られていると、足元以外がお留守になる。
「ぐぉおおぉぉぉっ! てめぇぇぇ! オレはバカじゃねぇぇぇぇ!!」
「みっ! 『
白馬は注意を足元に集め、頭には血を上らせると言う器用な事をしていた。
そうなると、自然にガードしていた手も芽衣の排除に応用したくなるのが心情。
「あれー? もしかして、今って大チャンスかにゃ?」
実はコツコツと残ったルベルバック兵を『
自分の存在をこの地に知らしめる時が来ていた。
「よーし! パイセン、全力で行くよー!! むむむむむっ! 煌気集中! そぉぉりゃあぁぁぁぁっ!!『
クララがよく使う『ヘビーアロー』の応用で、回転と電撃を加えた弓スキルは、アタック・オン・リコの大砲によって強化され、真っ直ぐに白馬の胸を貫いた。
クララの狙撃の精度は極めて高く、ピンポイントでガードの薄い部分を撃ち抜いた腕前は称賛に値するものだった。
諸君、拍手と指笛をお願いできるだろうか。
「ひゃああっ! こっちに倒れて来るのじゃ!! 逃げるのじゃ、芽衣!!」
「みみっ! もう逃げているです! ファニさんの周りにいるの、全部分身体です!!」
このままでは、白馬が倒れ込んだ衝撃でファニコラが吹き飛ぶ。
魔王のピンチに駆け付けられない親衛隊隊長など、存在する理由があるのだろうか。
ない。
だから、彼はやって来た。
「『
「だ、ダズモンガー!! 信じていたのじゃ! きっとお主なら助けてくれると!!」
「ぐーはっはっ! 吾輩、手を洗う時間すら惜しんで飛んでまいりましたからな!」
「ダズモンガー。今すぐ
「ぐぁぁぁぁっ! な、なにゆえ!? 吾輩の何がお気に召さなかったのですか!?」
強いて言うならば、衛生面だろうか。
清潔感のない男は乙女に嫌われる。
それは現世でも異世界でも変わらないジャスティス。
「南雲さん、この兵装が巨大化させてるみたいですよ。ぶち壊して良いですか?」
「くぅーっ! 惜しい! できれば持ち帰って研究したい! だが、だがぁ! こ、壊してくれ! 再起動されては敵わん!! だがもったいない!!」
白馬の背負う『
こうして、阿久津一党の一角が崩れる。
そして、オカルトめいた発想だが、戦いには流れが存在する。
今、その風向きが反乱軍の追い風に変わった。
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