第113話 空戦 立派に成長中な小坂莉子 帝都・ムスタイン 上空
ミンスティラリアから連れて来た飛竜は3頭。
先頭を行くのがダズモンガー率いる、青竜部隊。
青竜は口から吹雪を吐き、相手の攻撃を無効化する事に特化している。
その上で搭乗するダズモンガーが強力なスキルを繰り出す、理想的なバランス。
続いて大きな翼を羽ばたかせるのは、莉子の乗る紅龍部隊。
紅と冠が付く以上、もちろん炎のブレスを吐く。
六駆の『
それに加えて今や反乱軍でも六駆に次ぐ大砲娘、莉子のスキルもあり、火力だけならば頭一つ抜けている。
殿を務めるのは、白竜部隊。
数日前に六駆のスパルタスキル指導を受けた、逆神流の門下生たちが乗っている。
個々の力は前述の2部隊に比べれば弱いものの、一糸乱れぬ連係プレーはきっと戦いの役に立つだろう。
「それでは、吾輩から行かせてもらうぞ! 『
「あっ! ダズモンガーさん、危ない! なんか動くパネルみたいなのがあります!!」
ダズモンガーが敵陣に狙いを定めた結果、莉子は大局を見る事ができた。
そこですぐに気付いた。
自律してスキルに反応し、それを反射させようとする防御システムの存在に。
その正体は、阿久津が民間人から
帝都の造りは美しさを重視して作られており、これまで上空からの攻撃に対しての備えはなかった。
それはルベルバックが帝都まで敵に侵攻を許した事などただの1度もないからであり、強者の証明なのだが、それを放置するほど阿久津は間抜けではない。
彼は一計を案じた。
あえて無防備を晒した状態で、約100にもおよぶソーラーパネルのような防壁を自律展開させると言う策を思い付く。
これが実に巧妙で、例えばドーム型の防壁を展開すれば、一点突破を許してしまえばそこから一気に防御が崩れる。
だが、『
1枚で受け止められなければ、2枚で。それでもダメなら4枚。8枚。16枚。
まさに上空を漂う完全自動の防御壁。
オマケに、可能ならばスキルをはね返す事も出来ると言う代物で、阿久津の悪辣な思考とルベルバックの高度な軍事技術が良くない融合を果たした結果の傑作であった。
「ぬぅぅっ! こしゃくな! では、物理ならばどうだ!? 『
カカカカと『
武人としての誇りを持つ堂々とした作戦を用いた彼だったが、これは失策。
「ぐぅぅっ!? ……抜けぬ!!」
「ふぇぇっ!? なにしてるんですかぁ! ダズモンガーさんのバカぁ!!」
子供が10人いたら8人は泣きだし、残りの2人は気を失うと恐れられている虎の顔がモニョっとした感じになった。
数百年生きているダズモンガーくん、17歳の莉子さんに叱られて大層へこんでいる様子。
似なくて良いところまで師匠にそっくりである。
「もぉぉ! 白竜隊の皆さん、六駆くんに教えてもらったアレ! できますか!?」
「ははっ! 我らでどれほどのお役に立てるか分かりませぬが! やってみせます!!」
どうやら指揮権が移ったようである。
ダズモンガーくんもちゃんと100枚ある『
「皆の者! 英雄殿にしごかれた時間を思い出せ!!」
「おう! 思い出したくもない記憶が蘇って参るぞ!!」
「オレなんか非番だったんだ! ひでぇ目に遭ったぜ!!」
「全員、我に合わせよ!!」
「「「『
兵団長が合図をすると、30人が一斉に『
風の刃が順序良く列を作り、重心を波状に移動させながら巨大な円を描く。
気付けば、30の『
さながら、超巨大なフリスビーのようである。
「わわっ! こっちまで被害を受けちゃう! 竜さん、左に大きく避けて!」
「グワァッ!!」
莉子は素早く紅龍に回避行動を取らせた。
ああ、立派になって。もう一人前の戦士ではないか。
失礼。『
この巨大なフリスビーは、『
高速回転する刃が波のように押し寄せるため、『
白竜隊からは「おおお!!」と声が上がった。
胸を張るだけの成果が出ていた。
彼らの集団スキルは『
「よぉぉし! あとはわたしが! せぇぇぇのっ! 『
ここで真打ちの登場。
カッと赤い閃光が瞬いたかと思えば、次の瞬間には宙を我が物顔で浮遊する防御システムの存在を許さないと言わんばかりの威力で、左から右へ、西から東へ、次々にパネルが爆ぜていく。
「ふぅー。どうにかなったぁ! ダズモンガーさん、大丈夫ですか!?」
「吾輩、爪は抜けましたが、なんだか心が痛みますゆえ、早退しても?」
「うわぁ。なんか六駆くんにそっくりなこと言い出したぁー。そっかぁ。ダズモンガーさんも、結構おじさんですもんね。そっかぁ」
ミンスティラリアの内乱ではあんなに頼りになった虎の鳥獣人が、なんだかネコに見えて来た。
ネコ科ばっかりじゃないか、ミンスティラリア魔王軍。
空戦の初陣は莉子を中心とした飛竜隊に軍配が上がった。
ダズモンガーくんが心に傷を負った以外は無傷での攻略。
これは大金星である。
ただし、白竜隊は『
1度体勢を立て直すべく、アタック・オン・リコへと帰参する。
◆◇◆◇◆◇◆◇
皇宮では、阿久津が「くっははは!!」と楽し気に笑っていた。
「ちょ、まずくね? 『
「やー、あれはマジぱねぇわ。あーしの責任じゃねーし」
阿久津は狼狽えるパーティーメンバーを無視して、ひとしきり笑い尽くした。
そののち、「あー! これだからおもしれぇんだよ、戦争は!!」と叫んで、ニヤリと歯を見せる。
「作戦をフェイズ2に移行させる。『
まだまだ種も仕掛けもあるのだと無邪気にはしゃぐ阿久津。
白馬は、阿久津とパーティーを組んでから彼が苦戦するのを見るのが初めてのため、気が気ではないのが本心。
犬伏はのんきに笑っている。
だが、白馬も阿久津の狂人じみた実力を信じて疑わない。
半ば妄信的な思考に心を落とし込む事で、精神の安定を図っていた。
「
「そうかぁ! よし、全部出せ! あいつらの要塞があるのは南門の先だったか。なら、そっちに向けて全ツッパだ!!」
阿久津の次なる手が反乱軍に襲い掛かる。
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