第60話 Fランク探索員・木原芽衣登場 日須美ダンジョン第2層
「すごい悲鳴が聞こえたよ!? 誰かが危ないんだよ!」
「第2層もさほど強いモンスターは出なかったはずだけど、新人探索員も多くいるからにゃー。もしかすると、デビュー戦かもねー」
「とりあえず、下りてみようか」
チーム莉子は急ぎ足で第2層へとやって来た。
上の階層まで響いていた悲鳴は途絶えており、六駆は見解を述べた。
「やられちゃったかな?」
「もぉ! そーゆう不吉な事を言わないの! 六駆くん、
「人使いが荒いなぁ。ふむ。あー。ダメだよ、莉子。この階層も探索員が多すぎる。弱弱しい
クララが「困ったにゃー」と続いた。
「しかもねー。悪い事に、日須美ダンジョンって第3層までは迷路みたいに道が入り組んでるんだよー。仮に場所を特定できても、そこに着くまで時間がかかるよ」
「なるほど。それじゃあ、さっきの悲鳴の主は無事に危機を乗り切ったことにしよう! ダメだった時は、ご冥福をお祈りするってことで!!」
「みみみっ! みぃぃぃぃっ!! みぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
六駆が話を纏めた瞬間に、ちょっと待ったと再び悲鳴が響いた。
せっかくいい感じに話が収まったのにと六駆はため息をついた。
何故ならば、清き心のリーダーが、助けを求める声を捨て置くとは思えないからである。
「六駆くん!!」
「ええ……。嫌だなぁ」
「まだ何も言ってないでしょ!? と言うか、わたしの考えてる事、分かるよね?」
「うん。まあ。莉子の事もかなり理解してきたつもりだよ。分かった、分かった。悲鳴の元へ急げばいいんだね?」
すると莉子は首を横に振る。
まさか、清らかな心の乙女が助けを求める声を無視するのか。
六駆おじさんに関わり過ぎたせいで、心がくすんでしまったのか。
そんな事はないので、安心して欲しい。
ただし、六駆に影響を受けていることは否定できない。
何故ならば、彼女も割とむちゃくちゃ言うようになってきたからである。
「六駆くん、悲鳴の発信源は正確に分かってるよね?」
「だいたいは。声の聞こえた方向に
クララは褒められたはずなのに、どうしてだか心がモニョっとしたと言う。
「六駆くん! そこまでの壁を全部ぶち抜いて! 一直線に道を作って!!」
「ええ……。そのオーダーは想定してなかったなぁ……」
だが、チーム莉子において、リーダーの指示は絶対。
莉子は芯の強い女子なので、1度決めたら滅多な事では意見を覆さない。
それを知っているので、六駆とクララも諦めて頷くしかない。
「それじゃあ、やるよ。『
ミンスティラリアにてダズモンガーに教えた、『
元から強力な『
ガガガガガと迷宮のルールを無視して目的地へと突き進む六駆。
後を走って続くのが莉子とクララ。
その光景を目撃した新人探索員たちは、口々にこう語った。
「背中に莉子って書いてある人が、ダンジョンを破壊していた」と。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「みみゃぁぁっ!! あっち行ってですぅ! 『ライトカッター』!! みみみみみっ!!!」
「グァウゥゥゥゥッ!!」
到着した先には、予想通り配給装備を着た女の子がいた。
相手はやたらと手の長い猿のようなモンスター。
六駆の目から見れば大したことがなさそうに思えたが、彼の目に映るものはだいたい大したことがなく映るので当てにはならない。
「莉子ペディアさん。あの猿、強いの?」
「うーん。テナガナガザルだね。強くは……ないかなぁ。一般的なダンジョンの上層にいる、割とありふれたモンスターだよ」
六駆くんに謝らなければならない。
本当に大したことなかった。
「2人とも? 助けてあげないのかにゃ? あの子、超叫んでるよ?」
「でも、どうにか戦えていますし。わたしたちが割って入ると、成長の機会を奪っちゃうかもですよね。うーん」
莉子さん、ついに六駆おじさんと同じような事を言い始める。
助けてあげる流れで話はついていたのではなかったか。
「じゃあ、もう一回あの子が助けてって言ったら助けるってことで良いんじゃないの! よし! 誰がやるかじゃんけんで決めよう!」
「えー。あたしじゃんけん弱いんだよにゃー」
「わたしもですよぉ。六駆くんは強そう! おじさんってどうでもいい時の運が良いもんね!」
2度に渡るあいこの末、普通に六駆が負けた。
莉子におっさんディスをされた末に負けたので、なんだか彼は傷ついていた。
逃げ回りながらたまに『ライトカッター』を撃つ女の子に「そのまま上の階層まで逃げ帰るんだ!!」と心の中でエールを送っていたところ、出動の合図が響く。
「みひゃぁぁぁっ! もう無理です! 誰かぁ! 助けてぇですー!!」
莉子とクララの視線を感じて、六駆は「はいはい」と空気椅子を中断し、テナガナガザルへと駆け足で近づいて行く。
「『
細い糸のように
その返り血をマントで防いだ六駆は、尻もちをついた女の子に声をかけた。
「大丈夫かな?」
黒いマントを赤く染めたその姿は、彼女にとって新たな脅威そのものだった。
「みひゃあぁぁっ!? や、ヤメてー!
「いや、落ち着いて。僕は普通の」
「悪魔ぁぁぁっ!!」
若い女の子に冷たい言葉を浴びせられると、六駆おじさんのメンタルが削られるのは周知の事実。
目の前にいる女の子は、若いと言うよりもまだ幼く、そのダメージは深刻なものだった。
「……死のう」
「ああ、もぉ! あなた、大丈夫? わたしたち、悲鳴が聞こえたから助けに来たんだよ?」
「ひっ!? あ、優しそうなお姉さんです! うぇぇぇぇんっ! 怖かったですー!!」
「あはは。安心して! わたしたち、結構強いから! よしよし。頑張ったね」
その後、ひとしきり泣いた少女は落ち着きを取り戻し、礼儀正しく頭を下げた。
「芽衣は、
その終わりの瞬間を演出したのは、六駆くんである。
「木原……木原……。どこかで目にしたような気がするにゃー。……あああ! 探索員に最年少合格した、木原芽衣ちゃん!? 月刊探索員で読んだよ!!」
クララが有名人に会ったようなリアクションで、少女を見つめる。
「あ、はい。芽衣は15歳です。……でも、やっぱり芽衣には早すぎましたです。もう帰りたいです。そして海の底で貝になって暮らしたいです」
芽衣のネガティブさに六駆は親近感を持ち、莉子は彼女の自信のなさにかつての自分の姿を見た。
全員が芽衣に対して第一印象が良いという事態。
当然のことながら、彼女はまだ地上には帰れない。
厄介なパーティーに助けられてしまったからだ。
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