第51話 ゲームで最強チート技とか使いすぎると早めに飽きが来ない?@ばん
てってれー。
ヴァンダルムはレベルが上がった。
森での野外演習。
そこで遭遇した強敵『白狼』。
周りの仲間たちも、実力ある大人たちさえも次々と狼に倒されていく。
なけなしの勇気を奮い、主人公ヴァンダルムは子供たちを守るために立ち上がった!
激闘の末、なんとか勝利をつかんだヴァンダルム。
ナイフを手に取り、トドメの一撃……!
しかしそこで気が付いてしまう!
狼の腕に巻き付いた、自分とお揃いのブレスレットに……!
「このブレスレットは……!ゼファー君から貰った、お揃いの……!」
そう!なんとこの狼は、ヴァンダルムの大親友、ゼファー君の変身した姿だったのだ……!
な、なんだってー!!?
*
かくかくしかじか。
病みに呑まれて「究極完全体メンヘラもうどうしようもないモン!」になっちゃってた私は、なんかもうどうでもよくなって、黒幕っぽい人のところに「突撃⭐︎隣の名探偵!」をしに行った。
そしてなんか知らないけど黒幕に散々煽られて説教(?)されて更にメンブレして、私は「鬱だモン」に超退化した。
あーもう。しんどい。
副担、容赦なく私を言い負かしてくる。口喧嘩が強すぎる。
まあ、ただ八つ当たりしに行ったようなものだから、勝手に言い返せなくなっただけである。そもそもが『負け戦』だったのだ。
ていうかこれ、どこまで本に載せるんだろうね?
大分編集推敲という名の歴史改編隠蔽工作が成される気がします。
だってこの話の全ては公にできないような?
この本や出版社のスポンサーでもあるシェロン学園。そこで過去、恰も人体実験の様なことが行われていて。
その結果生徒引率含め重傷者多数。
なんだったらその前に生徒を行方不明にしてるよね?
多分やっちゃったよね?んで副担はそれ隠蔽してたよね???そうじゃないと辻褄が合わないよね???????
おいおいおい。今気が付いたわ。今更気が付いた衝撃の事実だわ。
私名探偵でもなんでもなかったわ。
これ当時気が付いていたらそれで副担ガン詰められたじゃん。口喧嘩勝てたじゃん。
あー。でも、あれか。当時はそれどころじゃなかったかもね。
病みに病みまくってたからね。
***
半ば洗脳のような形で承諾させられた『共同研究』の誘い。
私は放心して動かなくなったティムを放って、副担に腕を引かれるままに奥の部屋へと連れていかれた。
ティムは行方不明として処理された生徒「ハインツ」と同じクラスだった。
今思えば彼はその時、気が付いてしまっていたのだろう。
ゼファー君の凶行。その結果どれほどの犠牲が生まれたのか。
幼馴染の少年が抱えた闇。暗い情熱。
副担が『少年の夢』だと語ったもの。
それが少なくとも我々の生きる『社会』とは決して相容れはしないということを。
『少年の夢』の結末の一端を覗き見たのなら。
ティムが私よりも強く憔悴してしまっていることに、大きな納得感を落とされるから。
私よりも長く、彼は狼少年と同じ時間を生きてきた。
呆けて動けなくなる程に、その長い時間を掘り返す。
その空想に過ぎない過去に幾度も潜水を試みては後悔に溺れ。
意味のない反芻をして自分を罰し続けているのであろう。
そして私も彼と似たようなことをする。
神と和解を成すつもりなく十字架を背負う。
なんの意味もなく、何処にこの身を捧げればいいのかも知れず。
ただこの足は贖罪へと続く。
*
「あなたに習得してもらいたい古代魔法は『プロイベーレ』。
停止、静止、禁止の魔法。
そして……死の魔法と呼ばれています」
思わず私は、何を見るでもなく地面へと向けていた顔を上げる。
そのまま副担の顔を見上げては唖然としていた。
どうして『停止』とか『禁止』とかが、急にそんな『性能ぶっ壊れ最強魔法』みたいな呼ばれ方をしてしまうのか。
もしかして、もしかすると、その呪文を受けた者は必ず死ぬかい?
「この魔法を受けた者は死に至ります。
強制で心停止させるようなイメージでしょうか……。
ただの心停止と違うのは、この魔法を受けた者は……心肺蘇生しようと、何らかの救命行為をしようと、間違いなく死に至るということです」
驚いた。本当に必ず死ぬ魔法なのか。
回避不能というわけではないだろうけれど、「これさえあれば魔王もイチコロ!」みたいな話なんだろうか。
自分では使えない魔法だと言っていたと思うのだけれど、それでよく効果がわかるものだな。
「というのも、『当たれば必ず効果が表れる』というのは古代魔法全体の性質なのです。
君に使った『フレア』。
この吹き飛ばしの魔法も、杖先から伸びた光線に当たれば必ず吹き飛びます。
どんな体積でも。どんな魔法で抵抗しても。 どんな格上の相手でも望んだだけの効果が表れます。
『効果対象』に当たるか、自ら意識的に発動を止めるか、若しくは外的要因含めた何らかの要因で発動を維持できなくなるか。
古代魔法の『光線』は、これら以外では決して消えることはありません。
例えば……『プロイベーレ』!!!」
副担が呪文を唱える。
壁際の机に向けた杖先から、先程説明された通りに光線が伸びていく。
その先には鼠の入れられたケース。
この世界ではなかなかお目にかかれない、四方が透明なガラスの水槽だ。
光線はケースにぶつかる。
しかし衝突したような反応はない。
レーザーポインタを照射したみたいに、光線は透明な壁をすり抜け、鼠にそのまま到着した。
宣告通り、『停止の古代魔法』を受けた鼠はその場でピクリとも動かなくなる。
え。死んだか?
「さて。続いて……『火球』」
微動だにしない鼠を、私もジッと見ていた。
そしたら隣からオーバーキルのお達し。
精々ソフトボール球程の大きさの火の球が、既に事切れてる様にしか見えない鼠へと一直線。
見事、硝子ケヱスを破壊……なんて惨いことを!
……とは、ならなかった。
「あのケースは先程アナタが正面衝突した、対物対魔法両用の『結界』です。
結界の効果はアナタが身をもって知った通り。
演習場で皆さんが使っていた魔法を一度に全部ぶつけても、恐らく壊れたりはしないでしょうね。
そしてこの通り、古代魔法は障害物をすり抜けます。
それは魔法を弾く結界であっても、光も通さない壁であっても変わりません」
なんてこったい。
つまりガード不能の即死攻撃。
こんなのこの世に存在しちゃいけないだろ。
架空のゲームとかでもアウトだ。
ゲームバランス崩壊必至。
「今からこの魔法を、アナタには覚えて、使いこなしてもらいます」
oh...マジデスカ?
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