第8話 スポンサーの意向と言われてしまえばもうしょうがないと思うしかない@ばん

 あー。そうなのね。シェロン学園が編集部にかなり出資してるのね。ならまあ、こうなるのもしょうがないよね。


 やけに学園の威光的なアピールが強いやら、やたら副担先生の魔法描写が細かいやら。今となっては校長先生だっけ。副担先生。


 そういうことね。まあスポンサー様のヨイショは大事よな。うんうん。しょうがないね。


 そういうことなら私も少しは気を……使うかは知らんけど、途中で面倒くさがるかもしれないから保証はできないけど。まあどうせ後で編集というか検閲されるからいいでしょ。


 ***


 懐かしいなあ。入学早々女の子に絡まれて内心めちゃくちゃビビってたわあ。苦手なんだよなあ。ああいう「委員長系」というかいかにもまじめっぽい子。自分が不真面目なのを見透かされているような感じがするというか。


 なんだろう。今思えば私の対応ってかなり癪に障るというか。よくなかったなあと。反省してます。


 気が付いてたんだよ。だって。受験の時のやらかしに本当は気が付いてたのに「あなたの方がすごいですよ~」なんて言って、ねえ。煽ってるようにしか聞こえないようなこと言っちゃって。そりゃムカついちゃうよね。それで内心では「私の方が凄い」って思ってたんだもん。本当に嫌な奴だよ私は。


 その後だって本当は出来ることでも『できない』って誤魔化して。大した理由もないのに真剣な女の子を適当にあしらって。


 あの子、当時からそんな私のちゃらんぽらんな態度を見抜いていたんだ。私の方も当時から「絶対バレてるな」って思いながらも、深く相手を思いやることなんてしなかった。わかってて適当に流してた。本当に、最低だったと思う。

 


 正直に言えばナメてたんだよ。当時の私は。年齢はこっちの方が年下でも、文字通り精神年齢は一回りも二回りも相手が下で。

 あの子のことを「子供だから」ってなにも考えずに。プライドだとか、人格だとか、そんなものあんなちっちゃい子供には大してないだろうなんて大人のエゴ。


 いやだねえ、子供のころはそんな大人にムカつく側だったのに。


 この時代の私は特に浮かれていて、思い返すと失敗ばかりしていた。今からいやでも振り返らなきゃいけないなんて憂鬱この上ないよ。


***


 副担先生の魔法は一応感動してた覚えがあるよ。今更フォローしてもって感じだけど。


 なんか思ったより私の無反応っぷりが悔しいって言ってたから。一応ね。


 あの人もそんな「プライドがー」みたいな所あったんだなって再発見。目的とか研究以外のところは全部どうでもいいって人だと思ってたから。人間らしい感情あったんだーって。あ。こういうのはスポンサー的にアウトか?



 あの魔法、「鱗粉」って名前なんだね。

 きらきらしてて、「こういう魔法の使い方もアリなんだなあ」ってボーっと見てたのを覚えてる。


 それまでは前世のRPGとか漫画とか、そういういかにも「戦闘に使います!」「これがあると便利になります!」みたいな、魔法に対する固定観念が強かったから。


 前世の世界だって、火薬を使って「ただ綺麗な花を空に打ち上げたい!」みたいなことをしてたもんね。魔法ならもっと不思議な現象を起こせるんだから、そりゃあ「やってみよう」ってなる人が出てきてもおかしくないよなあ。


 そんなことを考えつつ見てた。あの時の魔法はいまだに思い出すくらい、素敵だったのを覚えてる。


 なんだか某世界的アニメーション会社の世界みたいで、懐かしさすら感じてた。


 ただ残念ながら当時から「感情抑制」みたいなパッシブスキルを既に身に着けていたはずだ。だから常に真顔に近いし、無感情に見られがちというか。


 だから知らない人には冷たい人間に見られてるのかもなあって。

 一応気を付けてはいるんだけど。一度ちゃんと話したことがあればそんなことないとわかってくれてたとはおもうんだけど。中身は小心者だから、話すことはしょうもないものだし。そんな深くなにか考えてないよ。


***


 でもそっかあ。母校がスポンサーかあ。まあ学校の描写を入れたら宣伝になるし、私のネームバリューがあるのもデカいから、自然な流れかなあ。


 だとするとあんまり大っぴらに当時のことを話しても、検閲は厳しそうだよねえ。

 せっかくだからありのまま色々ぶちまけたかったなあ、なんて。

 


 いや、そもそもこんな駄文、そのまま載せるわけないんだから気にするだけバカかも。


 どうせ「英雄のイメージが崩れるのでダメです」みたいな感じで、ほぼ全検閲全編集ゼロ原型でしょ?

 だったらもう書くだけ書いて、ダメなところ後で直して貰えばいっか。気を使って書くの面倒くさい。


 それよりなにより、当時の自分の失敗を、自分の手で誤魔化して書くのは、なんか嫌だ。


 私はちゃんと反省できる人間でありたいし。愚かだから同じ失敗もしちゃうかもだけど、それでもダメな自分を認めないでいるのはなんか、ダサいと思うし。


 だからもし今後、私の失敗に関することが話の中に出てきたら、ちゃんと正しく訂正して、ちゃんとダメだったことはダメだったって、言いたい。


 本当にただの自己満足にしかならないけれど、それでも。


 あーあ。前世でも今世でも、宗教的な思想を持つのはバカみたいくらいに思ってたのに、ああいうのに感化する気持ち、わかっちゃったかもしれない。


 誰にも届かないからこそ素直に自分の罪を話して、少しだけ楽になる。そんなずるい告解なんてないか。同じにしたら怒られちゃうよ。



 私は神に告白しない。いずれ消えてしまうかもしれない懺悔だけれど、嘘偽りなく話します。それは絶対に神に対してなんかじゃない。ただ自分のため。


 誤魔化すことはしたくない。吐き出して少しでも楽になりたい。大昔の失敗話だから今なら口に出せる。本当に謝りたい人には、もう謝れない。


 これはそんなしょうもない理由を積み重ねただけの、自分勝手なもの。こうやって今からやろうとしてることを腐して話すのも、「自分が今からズルい方法で自分を罰します」と正直に言えば心象がよくなるんじゃないかなんて打算。誤魔化し。矛盾。


 誰も聞いていないのに、誰の心象に気を使っているんだろうね?


 だからこれは、誰にも届かない、私のための、ばかみたいな、贖罪。

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