いらない贈り物 1

 一学期の終業式以来、久しぶりに学校へ来た。

 内容の濃い日々を夏休みの頭から立て続けに過ごしてきたせいか、日常を過ごしている場所が新鮮に感じる。8月に入って二週目に差し掛かったばかりだというのに、気分的にもう大半を終わらせたように思う。

 今日わざわざ学校にまで出向いた理由は、別に登校日だとか、補習授業を受けにきたからというわけではない。現に今、Tシャツにカーゴパンツというラフな私服で来ている。流石にこの格好で校内に入って生徒指導の教師なんぞにでも見つかろうものなら大目玉を喰らう。

 時刻は日も暮れ始める19時過ぎ。日中の暑さも幾分か和らいで、じっとしていれば風が涼しいと感じられる程だ。俺は校門前のガードレールに腰を預け、スマホでSNSをぼーっと眺めていた。

「お腹すいたな」

 腹の虫が鳴き始めた頃、薄暗くなった校舎から待ち人が小走りでやってきた。

 肩に大きなボストンバッグを肩に下げ、走るたびにそれがガチャガチャと音をさせている。白い制服のブラウスが薄明かりに浮いていた。

「お待たせしました、先輩!」

 膝に手をつき、息を切らせながら小柄な少女はそう言った。

「待ってないよ。今来たとこ」

「絶対嘘です。校舎から見えてましたから!」

 キザなセリフをふざけて言ってみたが、あっさり見破られてしまった。眩しいくらいのその笑顔は彼女の姉とそっくりだ。可愛らしい顔立ちでのその笑顔は、その辺の男子ならイチコロだろう。学校のパンフレットのモデルに選出されたという噂の彼女は、さぞかしモテるはずだ。美少女ってこういう子を指すんだろうな。

「絵の進捗はどう?」

「順調です! このままいけば間に合いそうです。あ、ありがとうございます」

 重そうな彼女のボストンバッグを持ってあげようと手を差し出す。彼女はお礼を言って俺にボストンバッグを手渡した。

 画材道具が色々入ったそれは、かなりの重量だった。華奢な女の子が家まで短距離とはいえ、これを持ち歩くのは酷だろう。

「コンビニ寄って良い? お腹すいちゃった」

 彼女に訊いてみると、ハキハキとした返事が返ってきた。

「はい! 大丈夫です!」

 道すがらコンビニに立ち寄って二人で買い食いし、俺は彼女を家まで送り届けた。

 どうして俺が可愛い後輩の女の子の送り迎えをしているのか。その理由は、さかのぼること数日前にあった。

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