第47話 黎明  誰もが笑える世界

 世界に点在する大小の統治者が一堂に会し、祝賀を上げて世界の人々、一切万象万物が共生であることを確認する儀が計画された。世界各国に招待状が送られる。北極圏の都市に一億の人間が来て、式典を祝う準備が進められるのであった。

 レターヘッドに彝啊呬厨御の聖紋が浮き上がる手紙が世界中を舞う。


 アカデミアも招かれていた。

「竟にやったわね」

 ユリイカが独り言ちのように言祝ぐ。窓際に立ち、ヒムロの方角を眺めた。遙か数万キロメートルの彼方を。


 ロネ・ストリントベリイは聖天帝皇となっても、議会堂のある大宮殿の広大な敷地内に山を築き、そこに粗末で小さな山小屋を建てて、鉈を研ぎ、バーボンを舐め、パイプを吸っていた。とは言え、今や式典準備を総括する立場である。情報を収集し、全世界へ命令をここから発していた。紫煙の中で、すべてを掌握し、思惟している。

「そろそろ逝くか」


 式典の十日前であった。突如、翼ある龍に跨る。その日のうちに西大陸から北大陸へ渉った。そして、八面六臂の働きをする。


 彼のように、龍に乗れる者はよい。この世界(イデア・アース)を一周すると、約六万九千キロメートル。遠い者は龍馬を公費から手当てされるが、中途半端に近いと、そういう手当もない。二週間にも及ぶ長旅をしなければならない場合もあった。


 それでも招待された者たちは全員が前の日までに集結した。皆、俄かに用意されたホテル・宿泊所に泊まる。粛々としながらも、華やかな祝祭気分であった。どこもかしこも前夜祭である。すべての人々が笑っていた。

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