第31話 地下へ

 イヰリャヌートの洞窟、いや、地下都市への移動は完璧であった。

 水も空気も確保されている。

 この洞窟への入口には、途轍もない圧力で固められた数百メートルの厚さを持つ大磐で幾重にも塞がれた(いゐりゃぬ神の神威なくして、どうしてできようか)。

 しかも、洞窟そのものの周囲は強固な岩盤である。

 ここが水などの浸蝕でできたものではないことは晰らかであった。

 夏涼しく、冬暖かい。常に空気が新鮮できよらさやか、地下水流や湖の水も麗しく潤い、うまい。

 食料の備蓄は、大量の塩で漬けられたものもあるが、乾燥したものが中心で、たっぷりあった。

 家畜の飼育スペースも広大で、乾燥したトウモロコシが大量に飼料としてある。

 薪は見上げるほど積まれ。、燃料も何十万バレルもあった。

 五千人が数年暮らすに充分である。

 イシュタルーナはこの都市をアビスと名づけた。

 長老のアビスの名に因んだのだ。

「イシュタルーナ様、ご安心ください。我らのことはご心配なさらずに」

 イシュタルーナは強く頷く。

「心のままに。

 他に何もない」

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