第14話 最初の饗宴

 ファルコは構築されていく生活を再確認しながら想い、こう言った。

「俺も決意した。完全に、ここで暮らそう。定住をしよう。御社の西の外側に、自分の棲息地、棲家を作ろう。

 農場はエクシスとテンツのポジ兄弟と、エッセンとティアのネガ兄弟に正式に任せよう。四人でよく話し合い、協議し、協調して寡頭政治をするよう指示しよう。

 ポジ兄弟に任せれば現実的だが、品が下がる。獣的だ。聖化しようとするネガ兄弟の手法も必要なのさ。正解はない、すべてはバランスだからな。奴らによくそう伝えろ」


 ファルコはそのようにボッカに命じて、スミスとともに帰らせる。

 ジョン・スミスは鍛冶の工房を作るために、弟子を呼びに帰るのであった。

 ロネは九十九人のうち、十数人に声を掛けて手伝わせ、屋根だけがある(壁のない)大きな釜場を作り上げた。大勢の人間の食事を調理できる場所が必要だったのである。


 ゾーイの配下に、チエフという者がいた。

 エミイシの軍にいたものだが、元々の職業は小説家で、提案した。

「東西の物見櫓があるだけでは無意味です。城壁のような木の壁が必要です。至急造営し、併せて、そこを青銅の九十九人の住居としましょう。どうですか」

 青銅の兵士たちは、自分たちの居所として、東西の塔門を端緒とする社の敷地を囲む壁として、ぐるりと環状の集合住宅を階層的(四階建)に造り、城壁的な役割を兼ねるという計画を立て、五人の聖者に相談し、設計をしてもらい、施工を始める。

 完成までの間は、引き続き洞窟で寝食した。

 かくして最初の石壁はわずか一週間で完成し、素朴な塔門と合わせれば、総計百二十五人が住む建造物となった。


 イシュタルーナはその間にも、別に指示し、

「社に聖なる飾りがない。真理を荘厳して真理たらしめよう。一切皆空である。聖なる常緑樹の枝葉を飾るべきであろう」

 ロネが言った、

「それもよいでしょう。そして、盛大なる儀式のための、もっと大きな祭壇をも作りましょう。彫刻の妙技巧を凝らさせて。

 それが今、巫女騎士様のお言葉にも適いましょう。

 さあ、諸君、聞いたとおりだ。この仕事は君たちのものだ、五人の、聖者にして聖戦士たる者たちよ、君たちに任せよう」


 画家レオヴィンチはたちまち羊皮紙に木炭で定規を当てながら図案を描き、それを基に大工アーキが切り出した部材に、彫刻家ミハアンジェロが装飾を刻み彫り浮き上がらせ、建具屋ガルニエとアーキで、それらを組み立てる。ガルニエは金物の装飾具を作って嵌めた。

 社の前に、木彫と装飾具で荘厳された四阿(あずまや)が設けられ、そこに原初的な大祭壇が置かれる。

「獣や魚の贄を積み上げよ、酒壺を満たせ、青々識針葉樹の葉を飾れ、木の実をならべよう」


 それらが供えられた。太陽の剣を、いゐりゃぬ神の双眸の光に翳す。今まで以上に聖の聖なる御魂の流出を受けた。歓喜の源なる光善を褒授する。剣は眩く光裂し、世界をホワイトアウトさせた。


 巫女騎士は立ち上がり、曙光に燃える高き雲のように髪を靡かせ、言う、

「偉大なるかな、大いなるかな。あゝ、幸福よ。弥栄あれ、真幸くあれ。さあ、これより位階を整える。銀の兵は騎士となる。将校として、青銅の兵を従えよ」

 参集した一同の歓声。イシュタルーナはさらに言う、

「さあ、皆も食べよ。酒を飲む者は呑め、赦す。饗宴だ」

 歓声が上がった。

「あゝ、何て素晴らしいんだろ。二人きりの時が嘘のようだ。これ凄い美味しいね」

 ラフポワは初めてこのような盛大な(しかし、粗野であることには、一向に気がつかなかった)饗宴を見る。幸せの極致だと感じた。

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