第12話 太陽の剣

 神聖の上にも聖の聖なる真究竟の真実義たる太陽の剣が完成した。

 究真究極に真なる儀式が執り行われる。聖句が嘉され、秘祭密儀が荘厳に奉ぜられ、聖なる器に酒や贄が盛られた。

 聖なる意匠を凝らした螺鈿や金銀や蒔絵による拵えの鞘(荘厳しないという指示はイヴァンが大いに反対し、このようになった)から、イシュタルーナが抜剣する。

 いゐりゃぬ神が開眼し、双眸が青く燃え上がった。

 剣は神化し、角ある原蛇の鱗の一枚一枚までもが精緻に浮き上がる。聖なるイの御徴が細密緻密で繁縟な文様(彫りと象嵌と刃紋とで、この文様を巧みに再現するという超絶技巧。強度や靭度は問題なく、確保されている)に囲まれて聖化されていた。

 生き生きとした鮮やかな生命の睿らかさを明晰判明にする。 

「おおっ」

 誰もが感嘆した。燦然たる輝きで、世界中が蔽われ、一瞬、何も見えなくなったのである。

 山が揺れ、雲なくも、甘露の雨が降った。香り高い、白檀香の匂いがする。

「未だ空の位階にある剣であるが、いずれ、大地をも裂く剣となろう。

 真理のすべてがこの刃に刻まれている。これが大義だ。考概ではない、実在だ。生々しく実在する義だ。実存だ。切実な事実だ」

 二日後。大斧で、太い枯れ枝を割って、薪を作っていたファルコ。

「旦那さま、大変だ」

 振り返ると、羊飼いのボッカだった。

「おお。どうした。何で、ここまで来たんだ」

「緊急な事態で、それで、この時期、暇な俺が来たんだ」

「火急なのかどうかわからない口上だな。おい、何があったかを、まずは言え。物事はな、結論から言うもんだ」

 ファルコは最初、笑ったが、ボッカが、

「エミイシの大将が武装した百人近い兵を率いて上がって来たんだ。イノーグ村占領軍の一部らしかったよ。恐ろしいことだ」

 ファルコはふふんと笑いつつ、顔を引き締め、

「早速、来たか」

 

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