第528話 そいつは違いねぇ

 そしてこのあたりでは見ない顔付きの涼やかな美貌でもってその長髪を重苦しく感じさせない。


 むしろその長髪が似合う程の美貌であるとも言えよう。


 そして、恐らくクロの故郷から連れて来たメイドであろう事がその前掛けで隠れている見慣れない服装により確信へ変わる。


「キンバリー様とターニャ様ですね。お二人にはクロ様より定期的に送られて来る映像より現段階でランクAと判断させて頂きました。 こちらのカウンターにてランク変更を行いますので冒険者カードを用意してお待ち下さいますようお願いします。お二人とは色々と話したい事も御座いますが雑用が御座いますので今は失礼させて頂きます」

「おいっ! どうゆう事だっ!? なんでこの獣女達よりオレ達の方がランクが二つも低いんだよっ!? フザケンナっ!!」


 そのクリスが私達を見つけ、こちらへ来るといつ覚えたのかターニャと私の名前を呼ぶと私達のランクをAだと告げる。


 その事に気分を害したのか先程Cランクと告げられてクレームを入れていた冒険者チームが怒声を上げ文句を言う。


「分かりました。では、そこの冒険者チーム井の中の蛙達、現実を見せて差し上げますのでギルド奥闘技場までお越し下さい」

「誰が井の中の蛙だってんだよっ!? クソアマめ、後で泣き叫んでも知らねーからな」


 そしてクリスと冒険者が奥の闘技場へと消えて行く姿を見てこの一連の流れを見た他の冒険者達があちこちで嘲笑や悲観する声が聞こえて来る。


「余所者だなありゃ。ここのモンならクロ・フリートの専属メイドだと少し考えれば分かるはずだし、そうでなくともあの見たことない服装とギルドでの役職を考えれば絶対に戦おうなんて思わねーし勝てるなんか思いもしないな」

「しかしあいつらどっから来たか分からねーが可愛そうに、時期が悪かったな。今の時期に拠点を帝国に変えるとはツいてねーよな」

「だが、どの国よりも安全かもしれねー。 今西にある魔族の国が怪しいって話だし案外こっちに来て正解だったかもしれねーぜ?」

「そういやクロ・フリート様は魔族なんだろう? 魔族が皇帝とは俺も歳を取ってるはずだ」

「そいつは違いねぇ」


 そんな彼らの会話を耳に入れながらギルドカードの更新が終わるのをソファーに座って待っていると聞き慣れた声が二人分聞こえ来る。

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