第527話 カラスの濡羽色の様な美しい髪


 変更箇所は二点でランクの基準をより厳しく、それに合わせてクエストのランクも下げる、この二点である為変わったと言えば変わったのだが変わっていないと言えば変わっていないというのが元職員の率直な感想であった。


 しかし冒険者、それも高ランクであった冒険者達からすればその地位と名誉を剥奪されたという事同義でありかなりの激震があったみたいである。


 今までSランクだった者が明日からはCランクですと言われても到底納得行くような内容でない事は想像に容易い。


「そう思うだろう? 俺もそう思ったのだがセバスチャン様からギルドへ派遣された方、クロ・フリート様の配下の一人であるクリス様のお陰でそういったクレームは諸々対処してもらったので楽なもんよ。 一応査定し直したランクに文句がある者は再査定を一度だけ受ける事が出来るのだが……」


 そう思ったのだがギルドリーダー曰くそうでも無いらしい。


 何でもクロの配下が派遣されているらしくランクによるクレーム処理を引き受けているみたいなのだが、そこまで言うとギルドリーダーは目線をギルド受付カウンターへと目線を向ける。


「だからなんでこのSランクである俺様がCランクにまで落とされなきゃいけないんだよっ!? おかしいだろこんなの!?」

「そう言われましても規則ですので」

「規則規則ってさっきから言いやがってっ!!」

「分かりました。 ご納得が頂けないようでしたら再検査をさせて頂きます。検査内容はこちら戦闘ランク査定職員として派遣されましたクリスさんと模擬試合をしていただきます。 もちろんクリス様に勝利して頂ければSランクとして登録させて頂きます。互角とみなした場合はAランク、防戦一方にて30分耐えれた場合はBランク、対等に戦えず耐え凌ぐ事も出来なかった場合はランクをDとさせて頂きますのでご了承下さい」


 ギルド職員がそう言うと奥に控えていたメイド服の様な出で立ちの女性がゆっくりと前に出て来ると静かに頭を下げた。


 この動作からもこの女性が恐らくクリスという女性なのであろう。


 その女性は漆黒であるのに光を反射させて艶のあるカラスの濡羽色の様な美しい髪を首元で一度布で包む様な方法で纏め、膝裏まで伸ばしている。

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