第519話 嘘おっしゃい

 その身体もまた真紅に輝き、カミーラと張れるほどの、しかしまた別の美しき美姫であった。


 カミーラが淑女とすれば彼女は戦乙女といった感じである。


「………ラース・ランドール、今回ばかりは怒りますよ?」

「あんたごときに怒られたところで何も怖か無いね。 それよりカミーラ、あんたどこの方言か知らないがエセ方言を忘れてるよ」

「っ、うっ、うるさいちやっ!」

「まったく、方言が可愛いと思て使うのは勝手だが自分自身が変わらなきゃ夫どころか彼氏すらできねーんじゃ無えの? ましてやそんなエセ方言に頼ってる様じゃな」


 新しくやってきたその真紅の戦乙女はあのカミーラとまるで友人の様に接し、しかも上から物言いまで言っているではないか。


 しかし俺の記憶の中に真紅の女性であのカミーラと同等の力を持つ者は文献でしか読んだことないのだが、一人しか思いつかない。


 しかし目の前の彼女の姿は俺が知っているその者とは文献に書かれている容姿とは異なっており、真紅の美しい翼や見事な尾は無く、またその四肢は真紅ではあるもののどこか違和感すら感じてしまう。


「い、言わせておけば………そういうアンタはどうながちやっ! あんただって夫どころか彼氏すらできたこと無いやんかっ! 人の事棚に上げる前に自分の事を先に何とかしたらどうながよ!」

「あ、あたい処女じゃないんで」

「………は?」

「いやーまさかアタイよりも強い男性と巡り合えてな、しかもすごいイケメンと来たもんだ。一応まだ結婚どころか婚約とかはしてないけどさ、一回だけとはいえ一応その、なんだ、男女のそういうまぐわいって言うのか?をやった仲ではあるからな。そういう仲はいわゆる恋人どうし? がするのだろう? だったら婚約も近いと思うが、やはりこういうのは男性から言ってほしいものだから今日ではないか、今日ではないかと待ち遠しくて悶々としてしまう日々を過ごしているんだよ。 しかしなんだ、こういう日々も悪くはないもんだな」

「う、嘘おっしゃい。 あ、ああ、脳みそまで筋肉で出来たあんたより強い異性なんか、い、いい、い、いるわけないじゃない」


 未だラースの言っている事が信じられないのかカミーラは噛みつき反論するのだが、カミーラが必死に反論すればするほど、必死になればなるほどラースはカミーラを見下す様な、それでいて絶対的なる勝者の表情へと変化していく。

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