第502話跳ね上がりますっ!!

 彼女達の気持ちは十全に理解できる訳ではないが、それでも彼女達の喜ぶ姿に自分の想像よりも辛かったのであろうと俺は思う。


「で、ではっ、是非私達をご主人様の奴隷としてくださいっ!! それが私たちの望みです!!」

「………は?」


 どうしてこうなった。


 確かに俺はこのダークエルフ達に好きに生きるよう言った。


 そして彼女達は俺の奴隷になりたいといった。


 確かに、何もおかしな点は見られない。


 俺が悪いのか?


 まさかこんな事になるとは思ってもおらず頭を抱えたくなる。


「そう言えばお前達に男の姿が見られないのだが、どこか他の別の所に居るのか?」

「……今、我々の種族に男性は居ません。 その代わり人間種であれば子を成す事が出来ます」


 そう言うダークエルフの瞳は「ですので是非貴方様の子種を下さい」と考えている心の声がダダ漏れている。


 奴隷から話題を変えようと試みた結果、余計に悪い方向へ向かって行っている気がするのだが、気のせいだろうか?


「【今】という表現をしていたが、本来ダークエルフに男性は居たのか?」

「はい。 十名程おりましたが、白エルフに敗れ全員殺されましたので現在我々には男性が居ないのです。元々我々ダークエルフは男性が産まれにくい種族でして、ダークエルフ同士で子供を作った場合ですと百人に一人程の確率でしか男性が産まれて来ません。 しかし、他種族であれば男性が産まれて来る確率が半分、五割にまで跳ね上がりますっ!」

「………」

「跳ね上がりますっ!!」

「お、おう……それは、すごいな?」


 現在ダークエルフの纏め役なのであろう目の前のハイダークエルフはとても大事な事なので二回言いましたと言わんばかりに「跳ね上がる」と繰り返す。


 異性の話をして戦争や内戦故のシリアスな展開に持って行こうとした結果、まさか他種族と子作りの話になるとは誰が理解できようか。


 しかし、ダークエルフは男性が産まれ難く、ゴブリンは雌が産まれ難い。


 その違いが生まれた理由は繁殖率であろう。


 繁殖率の高いゴブリンだと雄が多い方が高い繁殖率を生かせる。それに例え他種族に孕ませそれが産まれて来て殺されたとしても痛くない。


 逆に繁殖率の低いダークエルフは女性が多い方が身篭った胎児を守り、産まれてからも大事に育てる事が出来る。 そして女性が多い方がその数だけ身籠もれるという事である。

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