第492話わたくし…褒めて伸びるものですから
その光景はどこか幻想的なのだがハイエルフの目はお姉ちゃんを見るなり侮蔑の感情を滲ませているのが見て取れる。
そしてこのハイエルフの壁、赤い絨毯の先に五段程の階段、その上には神々しさすら感じ取れる椅子と、その上に座るハイエルフの男性の姿が目に入って来る。
「おぉ……そなたが我が未だ知らぬハイエルフと、奴隷として献上するハイダークエルフか……なかなかよの。 ハイダークエルフなぞいつぶりに嬲ったか。 ハイエルフのソナタも今まで出会ったどのハイエルフよりも美しい。 そうだ、我の妃となれ。流石に第一妃は既に何人か娶っている故無理だがソナタの美貌ならばそんなものも霞んでしまうであろう。 さて、まだ昼なのだが今から蜜月を交わすと行こうか」
「………寝言は寝てから言いなさい」
そして件の王は開口一番これである。
ハイエルフの王だけあってその顔も整っており美形ではあるもののまさかの中身がヘドロで出来ていてはたまったものではない。
しかしながら腐っていても一国の王である。
ある程度予想はしていたのだがここまで酷い物とは誰が想像できようか。
その有様に一瞬固まってしまったのだがあんまりにあんまな内容に思わず「あ」と言われれば「ん」と、「山」と言われれば「川」と、そう返すのが当たり前であるかの如く、まるで呼吸でもするかの様に否定する言葉を言ってしまう。
私の言葉にお姉ちゃんは目を見開くと笑顔になり怒りのオーラを纏い出すのだが、こればっかりは仕方のない事だと許してほしいと思う。
むしろ言葉遣いが崩れていなかった事を褒めて貰いたいぐらいである。
ほら、そこはわたくし…褒めて伸びるものですから。
しかし怒りのオーラを纏い出すのはお姉ちゃんだけのはずが無く、当然ながら周りにいるハイエルフ達からも怒りを隠す気配すら見せずそのオーラを漂わせ始める。
「……もう一度とう 。今、お主は何と言った?今度は良く考えて言葉を選びたまえ小娘。いくらハイエルフと言えども次はないぞ?」
「あら、長生きし過ぎて耳が遠くなってしまわれたのかしら。 寝言は寝てから言いなさいと言ったのですわ。 そうですわね……先程の言葉を頭を床に擦り付けながら謝罪して、全てのダークエルフを解放すると誓うのであれば……」
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