第490話エルフの忌子
「私の名前はマール・ハルミトンです」
それとは対照的にマール・ハルミトンと名乗ったエルフ受付嬢は淡々と自分の名前を名乗るのみでそれ以上何かをする事は無いのだが、その表情は怒りと苛立ちに満ち溢れていた。
多分この国で、ダークエルフを侮蔑しそれが日常の風景とかした環境下で産まれ育ったのならば恐らくマールのような反応が普通であろう。
であるならば二人のこの差は一体何処から来たのか少し疑問を抱く。
「っ……いくらハイエルフといえどもダークエルフがいる前でいつまでエルフが頭を下げるものではないですっ!! いい加減頭を上げなさいっ、みっともないっ!!」
「嫌だ」
「なっ!?」
「嫌だっ!! 嫌だ嫌だ嫌だっ!! おばあちゃんは言ってた!! 見た目で人を判断するなってっ!!」
「こ、これだから人に育てられたエルフはっ!」
「そうだよ。 私は人に育てられたよっ。 でも私は何も悪い事はしていないのに、おばあちゃんに育てられただけなのに、なんでそれが悪いのっ!?」
「そっ、それは……っ」
「おばあちゃんは、エルフは美しい人々だって、ハイエルフは眩しいくらい美しくて強いんだって言ってた! そしてマリアンヌ様に会えておばあちゃんの話は本当なんだって、そう思った……けど……この街で出会うエルフ達はみんなくすんで見えるよ」
しかしその疑問は彼女達の口論により直ぐに氷解する。
どうやらマール・ハミルトンは生粋のエルフ国の民でありエリ・ミューティアは人間の国で人間に育てられたエルフの違いがこの二人の抱く価値観の違いのようである。
「何を言うかと思えばっ!見てみなさいこの汚らわしい素肌の色を!! これこそ悪魔の申し子! 魔族とエルフの忌子の、何よりもの証ではないですかっ!!」
「……何か悪い事をしたの? フィオ・フィオーネティア様は何か悪い事を私達にしたの? ……何もしてないのに悪く言うのは、やっぱりおかしいよ」
「………」
「………」
言いたい事をお互い言い合い平行線の末お互いに睨み合う二人。
エリ・ミューティアは兎も角マール・ハルミトンの存在でやはりこのエルフの国の常識や価値観こそ憎むべき、粉々に砕くべきものであると確信する。
「ほらほら〜喧嘩しないのっ。ほら握手して仲直り喧嘩両成敗っ!」
そんな二人を前に緊張感のかけらもない声が聞こえて来る。
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