第451話助太刀

「フン、ここには雑魚しかいないのか?」

「俺の相手をして余所見とはいい度胸してんじゃねぇーか」


 そしてその魔獣は俺の事を一瞥すると敵では無いと判断し、その行為にギルドマスターが怒気を孕んだ声と鋭い斬撃で威嚇する姿が見える。


「魔獣が……喋っている……?」

「それもだが、ギルドマスターの腕が落とされている……あの魔獣は化け物か」


 リラがその異常さに気付き驚愕する声が聞こえて来るのだが、しかしその異常性に気を取られもう一つの異常に気付けないでいる。


 ギルドマスターの腕が一本、肩から先が無くなっているのである。


 そこにあるのは鋭い何かで斬り裂かれた切断面が焼けている肩の様な箇所だけである。


 恐らく止血の為にギルドマスターが自らの魔術で焼いたのであろう。


 その証拠にギルドマスターと魔獣が戦っているすぐ傍に切り口が焼けていないギルドマスターの左側の片腕が落ちているのが見える。


 あのギルドマスターが腕を落とされる事も、それ程の魔獣が現れ、更に喋るという事も目の前の光景その全てが異常だらけである。


 そして、腕を一本奪われた相手に対して腕一本無い状態で互角に戦うギルドマスターの強さを再認識する。


「俺はギルドマスターを補佐する! 他のメンバーは協力してブラックウルフを倒して行け! 今回の異常性を見れば分かるとおもうが副ギルドマスターであるニールが言った通り本来のブラックウルフの討伐ランクでない以上本来の戦法が有効でない可能性もある! ……死ぬなよ!」


 未だ森の奥からブラックウルフが溢れ出して来ている状況に俺はパーティーメンバーに指示を飛ばし、それに各々バラバラの返答を返事をするとすぐさま言われた通り各個撃破しに行く。


「助太刀に来ましたよギルドマスターであるラビンソンさん。失った左腕ぐらいの仕事はしますよ」

「うるさいわ、全く……敵は強い。 死ぬかもしれんぞ?」

「そうですね、師匠の方が先にやられそうなんじゃないんですかね?」


 そして俺は未だ戦闘を繰り広げているギルドマスターの所まで行くとすぐさま助太刀に入り、長年連れ添ったパーティーであるかの様に息の合った動きで補佐して行く。


 元々このギルドマスターであるラビンソンは俺の師匠であり本来ソロの冒険者であった所に無理言って弟子入りし五年ほど一緒に生活した過去があるため失った片腕部分ぐらいの補佐は出来ると思ったからこその助太刀である。


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