第450話魔獣の暴走

 これほどの規模の魔獣の暴走は、本来ならばまず有り得ない現象な為、目の前に広がる光景を魔獣の氾濫で有名なフイルド渓谷の砦に来たのではないかとドゴツが錯覚してしまうのも理解出来てしまう。


「お、お待ちしておりました!! Sランクパーティーである竜の尻尾の皆様!!」


 その光景に一度唖然としている時、ギルドマスターの補佐役である副ギルドマスターのニールが出迎えてくれる。


 いつもならばその美しい顔に冷静さを感じさせ飄々と仕事をこなしている彼女なのだが、俺達パーティーを出迎える彼女の顔には余裕は無く額に汗を滲ませ悲壮感すら感じ取れる彼女の表情に今回の魔獣の暴走がかなりヤバイ事が伺える。


「状況はどうなっている?」

「ギルドマスターと複数の高ランクパーティーが何とか抑えているのですが、いつ崩れるか分からない状況です!」

「分かった。 注意しなければならない事などはあるか?」

「はい! 今回の暴走は基本的にブラックウルフが主体ですが、一個体の強さ……討伐ランクはAランクに相当しますのでくれぐれも既存の知識に惑わされない様にお願いします!」

「了解。 情報感謝する!」


 状況が異常だけに魔獣自体の強さが本来の討伐ランクではない可能性は想定内だった為さほど驚く事も無く、情報を提示してくれたニールに感謝するとすぐさまギルドマスター達がいる場所へと駆け出す。


 ニールとのやり取りの間にも数頭の、ニールが教えてくれた討伐ランクよりも低いブラックウルフがあたりを駆けているのが見えていた為、あのギルドマスターが討伐ランクの低い個体まで手が回らない程の状況であると推測出来る。


 その討伐ランクの低い個体ですら討伐ランクBと本来の討伐ランクCよりも高い事に驚くも、無視して駆け抜ける。


「良いところに来た!! 俺はあの一番でかい奴を相手にしているからお前らは雑魚を食い止めてくれ!」

「ふん、また増援か……無駄な事を。 蝿が幾ら増えようとこの俺を倒せると思っているのか?」


目の前で繰り広げられる戦いは正に異常と言えるものであった。


 ギルドマスターと戦っている魔獣は恐らくブラックウルフの変異種であろうという事が分かる程にはブラックウルフの特徴を色濃く受け継いでいる、全身黒い体毛に覆われている二足歩行の魔獣である。

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