第444話ゴミ貴族との決闘

 中には強い個体もいるらしいが今の俺の敵ではないだろう。


 そして何よりあの丸薬をもう一つ持っているのだ。


 それを食べれば最早あの竜達に肩を並べる……いや、更に強くなる可能性だってあるのだ。


 そう一人もの思いにふけっていると「ギャウギャウ」と騒がしく鳴く者が現れる。

 その姿は実に醜く、そして愛おしいくもある。


 全体的に泥で汚れ、黒い体毛を所どころ乾いた泥が薄茶色に染め上げており、体重三百キロはあろうかと思える躯体をその四本の足で支えている。


 瞳は赤黒く動物に例えるなら猪のようにも狼の様にも見えるその顔を、長く鋭い牙を見せつける化の様に鳴き続けている。


「そうだな……今がまさにその時かもしれん」


 彼の言葉は分からずともその鳴き声が言わんとせん事は理解出来る。


『亜竜がいなくなり、王に例の秘薬がこの手にあるこの時こそ我々の力を見せつける絶好の機会である』


彼のその考えは私も当然思っており、我が下に付く者もまた同じ考えである事により時は来たのだと悟る。


 そして息をめいいっぱい吸い込み、空に向け全力を込めた声で叫ぶ。


 その雄叫びで空気は震え周りの木々は枝葉を震わせ騒めき立つ。


 その雄叫びに周囲から様々な声が夜空を埋め尽くして行く光景に、興奮と共にそれと同じぐらいの恐怖や不安といった感情も生まれて来る。


 上に立つ者のプレッシャーを始めて肌で感じ、それらマイナスな感情はやる気へと変わって行く。


 この丸薬を飲めば下手をすれば自分は自身の急激な強化や進化に耐えきれず死にはせずとも長くは生きられないという事は一回使用した感覚から理解出来ているが故に、自分が成し遂げた偉業のその先を見る事が出来きないのは少しだけ……いや、かなり寂しくはあるがこれから起こす偉業が達成出来るのならそんな考えは取るに足らない。


 そして自分は残った丸薬を口へと放り込み噛み砕くと飲み込む。



◇◆◆◇



 現在日差しが少し傾きかけた午後一時、我が主人であり将来の夫でもるクロ様を侮辱したジェネイルとかいうゴミ貴族との決闘するべくセラ達はギルドの所有する闘技場に来ていた。


「いよいよですね……」

「昨日の夜からどう懲らしめてやろうかと思うと興奮して夜も眠れませんでしたの」

「……潰す……」

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