第443話机上の空論

 ダルクに言われ多少バツが悪そうにクロ・フリートとコーネリア・ジャドソンとの戦闘内容を既に何らかの形で把握している事を肯定するミミリアなのだが戦闘内容に関しては否定的な態度を崩さない様である。


「そもそも段位十を超える召喚魔術という言葉が出て来た時点で信憑性は無いも同じでしょう。 現在の最高段位は七ですのよ? それを一段位ならまだしも三以上も一気に超えて来る事がもはや嘘くさいでしょう? アーシェ・ヘルミオネとの戦いでお互い使用したとされる高段位魔術ですら怪しいものね」

「確かに段位十を超える召喚魔術というのは確かに信じられないのは認めよう。しかし、ランクSを超える冒険者や貴族などが口裏を合わせて嘘を吐く理由が見当たらない」

「それこそクロ・フリートに脅されている可能性だってありますわね」

「そこまでにしましょう。いくら考えた所で机上の空論の域を脱しません」


 ダルクとミミリアの会話がお互いの粗を探し否定する流れになりかけた所で無理矢理会話をストップさせる。


 今はそんな事に時間を使うよりも分かっている事からどうするかを話し合いたいとエルルは思うのだがお互いに不満そうな表情をさせる二人を見て、一筋縄には行きそうにも無い現状に深いため息を吐くのであった。



◇◆◆◇



 彼はこの地帯一帯を統べる王である。


 彼の他に王と名乗る者はいるのだがその中でも主に西の荒野付近を縄張りとしていた亜竜が人間ごときに倒された。


 これにより王は王としての信憑性をより確かなものへと高めると共に更に勢力を強めその支配下地域を広げて行く。


 それもこれも全てある元貴族と名乗る人間から奪った黒い丸薬を飲み込んだお陰で手に入れた暴力的な力のお陰であろう。


 その力は単なる群れの下っ端であった俺を、何の苦もなく先代の頭を亡き者に出来るだけでなく正に王としてこの一帯を統べるだけの力を手にしたのである。


「人間というのは弱い癖にこういう所だけは抜きん出てるな……」


 人間ーそれは敵の牙や爪、ブレスを防ぐ硬い皮膚も鱗も無く、我々のそれらを貫く牙も爪もブレスも持っていない存在である。


 唯一武器と呼べる物は、ゴブリンより少し器用であり知能もそこそこ高いとう事だけであろう。

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