第445話私の嫌いな人種そのもの
ふふふ、ほほほと不気味な笑い声が闘技場をぬるりと聴こえ、その笑い声を運悪く風に流れて聞こえてしまった野次馬、特に男性は股間を一瞬無くしたような感覚を味わい得もいえぬ恐怖を理不尽にも感じさせられていた。
「ふん、逃げずにやって来るとは間抜けだな」
そんな奇妙な事が起きているとも知らず既に闘技場入りしていたジェネイルは太々しい態度でセラ達を出迎えて来る。
「あなたこそ、良く来れましたね」
「俺が負ける訳がないからな!」
私の言葉にジェネイルは自身の装備について見せびらかせるとと共にその効果の説明を頼んでもいないのに説明しだす。
やれ剣が物凄く高い魔剣だの装備している甲冑は先祖代々伝わる由緒正しき一品だの指にはめている指輪がどうのと、長々と自慢してくる。
そしてその自慢の一式を聴き終えた私の反応はウィンディーネとルシファーと同じ反応であった。
「そんなショボい装備を長々と自慢した挙句お互いの装備の足を引っ張る様な組み合わせ……あなたバカなんですか?」
私の当然とも言える発言にウィンディーネもルシファーも大きく頷く。
かたや打撃の威力を上げ魔術の威力を下げる装備をし、かたや魔術の威力を上げ打撃の威力を下げる装備などをしているのである。
いくら装備品の効果や能力を鑑定出来る者がいなかったとしてもその装備品を装備すればどの様な効果をもたらす事が体感出来るはずである。
だというのに目の前の貴族は素人でもまずやらない装備の仕方をしているあたり本当に何も知らないのか単なるバカなのであろう。
いやその両方なのかもしれない。
「い、言わせておけば……っ!!」
そしてその張本人は顔を真っ赤にし激昂し始める。
自分の思い通りに事が進まなければ直ぐ怒るなど、逆に言えばこういう人種こそ以前クロ様が語ってくれた裸の王様になりうる人種であり煽てるだけで良いのだから操りやすいのであろう。
その感も唾を飛ばしひたすら私達の事を罵倒して来るのだがもはや支離滅裂過ぎて作業用BGMぐらい聞き流しても問題ないレベルである。
そしてジェネイルが審判としてこの場に居合わせている女性ギルド職員に早く試合を始める様に怒鳴りつける。
その様は正に私の嫌いな人種そのものである。
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