第438話この能力にも穴はあった
この街で一番強いと言われる一人、エルルが魔術もスキルも使えない者に防戦一方の戦いを強いられると誰が想像しただろう。
当初想像していた展開と全く違う展開にエルルはボナから逃げ、距離をとり広い闘技場を逃げ回る。
そうして恥を捨て時間稼ぎをし、必死に対策を考えるも良い案は一向に考えつかずそれどころか気が付けば闘技場の壁際まで追い詰められていた。
その手際の良さはまるでこの闘技場こそが彼女のホームであると思えてしまうほどである。
「土魔術段位二【泥人形】」
地の利はこちらにあると思っていたのだが、最早全てが覆されてしまった。
まさか土の地面で私が泥人形を攻撃ではなく防御、しかも攻撃を防ぐのでは無く逃げる為に使う時が来るとは思いもしなかった。
エルルは自分にそっくりな泥人形を一気に六体作ると四体はボナの妨害、そして残り二体は自分の護衛に付け恥を承知で逃げに徹する。
しかしボナを妨害しようとした泥人形はボナの斬撃で今まで同様簡単に元の土に戻されてしまう。
それでもエルルは更に六体の泥人形を作り、それと同時に護衛している二体にバフと土魔術で作った武具を装備させて行く。
この泥人形を巧みに操る戦法が出来るからこそエルルはソロでトリプルSランクまで登りつめる事が出来た。
泥人形の強みはやはり土で出来ているという事であろう。
元が土である為土魔術をさらに重ねがけ出来るのである。
そして他の属性と違い土が無い場所を探す方が難しく、その場合操る属性を魔術で具現化する必要性が無い上に本物の土を使っている為土魔術を重ねがけした場合具現化した土よりもかなり素直に重ねがけ出来る。
その理由に具現化したものは『使用する魔術の為に生み出されたもの』という概念が加わっているからである。
だからこそ複数もの泥人形を操れるエルル相手に一定量以上の土がある場所で主導権を奪い場を支配している現状がどういう事であるか理解出来ない者はこの場にはいない。
エマ以外は。
だがエルルは消されると分かっていても、消された分泥人形を生成しボナに向けて放つ。
それにしても、いくら魔術スキルを消せる能力があったとしても私まで攻め込める戦闘センスは驚きを隠せないな……しかし、やはり彼女のこの能力にも穴はあったか。
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