第421話唐変木と言わざるをえない

『どうした?セラから電話なんて珍しいな』


 さて、どの様に謝り倒せば許してくれるのか?と考え始めた時、例のタブレットからクロ様の声が聞こえて来るとそれと同時にタブレットにクロ様の姿が映し出された。


 どうやらセラ様はテレビ電話とやらにしているあたり無駄に抜け目がない。


 そして色んな意味でこのギルドで有名になりつつある私達に聞き耳を立てていた者達が驚愕する声が聞こえ出す。


 確かに遠くの者と会話するだけでも高価な魔道具が必要だというのに相手があんな板みたいな魔道具に映し出されているのである。


 驚愕するのも分かるが、私の今の気持ちも分かって欲しいものである。


「い、いえ……クロ様に聞きたい事が一つだけありまして……」

『ん?どうした?』

「ミセルから聞きましたが、私の……私達三人の胸をお褒めになったとかで………す、凄く……その、嬉しかったので……お礼を言わせて頂きたくお電話させて頂きました」


 途中「私の」の部分でウィンディーネ様とルシファー様に抗議の目線を向けられはしたものの、絶世の美姫が顔を赤らめ普段リンとしている姿からは想像もつかないほど乙女に様変わりしたセラ様にギルド内全員が息を呑み見惚れてしまう。


 しかしそれ程の破壊力があるセラの表情を前にして流石クロ様というべきか、眉一つ動かさず私の方へと視線を一瞬だけ映し『成る程』と呟く。


『そうだな…お前達の胸だけではない。その全てが掛け替えの無い大切な存在だ。勿論、ミセルもレイチェルもベッテンも俺にとってかけがいの無い大切な存在だ』


 クロからすればたんに自分の撒いた種から出た目を刈り取り、アフターフォローをしただけのつもりなのだがセラ達は勿論ミセル達を含む六人の美女から「ずきゅうーん」という音が聞こえて来そうなほど無意識に射止めてしまっているとは露ほども思っていないだろう。


 そして当然そんな状態で正常に彼女達が動けるはずも無く感動で胸を撃たれた衝撃を大切に抱きながら打ち震える事で精一杯である。


 その状況を見た自称唐変木では無いと自負するクロは自身が言った言葉の破壊力を目の当たりにし「じゃあ身体に気を付けてな」と言うと通話を切ってしまう。


 自分が言った言葉が彼女達、特にセラ達にどれ程の破壊力があるのか理解できないあたりが唐変木と言わざるをえないとは露ほども思わずに。

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