第420話嘘である
そして私は伝家の宝刀をぬるりと鞘から抜き出しそれを何も考えず一種の気持ちよさを感じながら振り下ろす。
あの時クロ様から私の胸を褒めて頂いた時に下さった言葉はもはや大切な宝物であり一種の生きる糧である。
その事実を言おうとした時、当のレイチェルは「死にたいのか!?」と言う表情で私の言葉を遮ろうとし、そして言い終えた時「助ける事が出来なかったっ!」というような表情をしていた。
その表情は今までのやり取りの様にからかってる様な表情ではなく本気でそう思っている表情をしていた。
実に失礼な話である。
まるで私がこの話をすれば死ぬみたいな反応に少々苛立ちを隠しえない。
「ミセル……それは本当なんですか?」
「クロ様は本当にあなたの胸を褒めたのかしら?」
「……ん、気になる」
あ、なるほど。なるほどです。
レイチェルが何故あのような表情をするか合点承知の助である。
「デ、デモ……ミナサマノ、オムネサマモ…オホメニナッテマシタ……ヨ?」
嘘である。
嘘であるがしかし師匠と弟子としても教示を受ける様になってから……いや、その前からすでにセラ様ウィンディーネ様ルシファー様はことクロ様の事となると少々、いやかなり暴走してしまうという事は嫌でも思いさらされた事実である。
そんなん嘘もつきますよ。
自分可愛いですもん。
「ほ、ほほほほほ……本当ですかそれは!?」
「今夜夜這いに来られたりしたらどういたしましょうっ!?」
「………クロ様……」
だがしかし、自分可愛さで吐いた嘘一つで一喜一憂するセラ様達を目にし多少の罪悪感が芽生える。
「確認の為にも一回クロ様にこのタブレットを使って電話してみようかと思いますっ!け、けしてクロ様の声で今一度お聞きしたいという邪な感情からではなくてですね、そう…これは……純粋にクロ様の声を聴きたいが為の口実であり至って清い感情から来るものです!ええ!」
「スピーカーで会話しなさいよセラ!」
「…………っ!」
しかしその罪悪感も一瞬にして砕け散る。
もしあの魔道具を使われてクロ様に胸の件を聞いてしまったら一瞬にして嘘がバレてしまうだろう。
しかし、興奮気味にタブレットを取り出し操作し始めるセラ様と、全員と会話を出来る様にスピーカー機能とやらにする様指示を出すウィンディーネ様にそれを興奮気味に肯定し勢い良く首を縦にふるルシファー様を前にして電話をするのは辞めて下さいと言う勇気は私には無い。
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