第413話呑気なやり取り

 パーティーのリーダーであろう女性が後輩であろう冒険者にかける言葉は無知も無知。仲間を死にに行かせる様なものである。


 そもそも通常の緋色亜竜ですらAランク以上のパーティー四組以上で相手をするのがセオリーでありSランクですら二組以上でないと厳しい相手である。


 余程の熟練パーティーでなければ一組ではまず無理な相手であろう。


 そんな相手、しかも明らかにあの巨躯からして基本的な緋色亜竜よりも間違いなく難易度が跳ね上がりSランクですら最低でも四組は欲しいと思える相手に件の発言である。


 倒すどころか逆に殺される事は火を見るよりも明らかであろう。


 最早冒険者を舐めているとしか思えないパーティーリーダーであろう女性の発言に同じ仲間の命を預かっている立場の俺は少し苛立ってしまう。


『わ……分かりました』

『何とかなるっしょ?』

『そうっすね。むしろ余裕かも?』

『まったくあん達は……ほら、十本刀の準備出来たから行くわよ』


 そして件のリーダーだろう女性の発言にも驚いたのだが、たったの三人で相手をしろと言われたもの達も同様にあの化け物の脅威を微塵も感じさせない呑気なやり取りが聞こえて来る。


 それと同時にこの三人中でも割とまともそうな、白銀の装備を着込んだ女性がどんな仕掛けなのか分からないのだが『出なさい【十本刀】』と言うといきなり周囲に十振りもの片刃剣のような武器が現れ彼女の周りに浮遊し始めたかと思うと更にストレージ持ちなのか二振りもの、今度は細身の実に美しい白銀の剣を両手で持った瞬間、彼女は比喩などでは無く正に矢の様に緋色亜竜へ一気に駆け出して行く。


「なっ……!?……はあっ!?」


 そして矢の様に特攻して行く事にも驚かされたのだがそこから繰り出される攻撃の数々が明らかにあの分厚い鱗をものともせず緋色亜竜へダメージを与えていっている事に先程よりも更に驚かされる。


 その強さは最早我々パーティーすら凌駕しているのではないかと思ってしまうほどである。


 まさにその姿は噂に聞く英雄の類、一騎当千という名が脳裏に過る。


『闇魔術段位四【英雄憑依】槍使いである宝蔵院覚禅房胤栄を選択………行くよ!』


 それだけでも驚愕的な光景なのだがもう一人、輝くような金髪を短くボブカットにしている女性が基本的に魔族が好んで使用する闇の魔術を行使した瞬間彼女の雰囲気が変わり、次の瞬間には白銀の槍を持ち先ほどから英雄染みた戦いを繰り広げている女性とともに参戦しだす。

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