第408話ここだけ見れば立派な恐喝

 ウィンディーネの目は、視界に入った物全てを氷らせるかの如き絶対零度の視線をギルド職員に向け言い放つ。


 一パーティーとしてでは無く一個人として彼等を訴えると。


「か、かかか、かしこまりましたぁっ!! ききき、金貨十八で違約金支払いで通させて頂きます!!」


 最早ここだけ見れば立派な恐喝である。


「お、俺たちが何をしたって言うんだ……そんな金払える──」

「──払える訳が無いなんて言わないですよね?」


 そして件の男性パーティー達はリーダーは簡単に倒されるは反撃するも見た事も無い魔術を使われ簡単に遇らわれるは閉じ込められるわで残った者達には最早私達をどうこうしようなどと企む程の者は残って居ないようではあるものの口を開けば金貨の減額を言い出そうとする。


 しかしそれを私が制する。


「強ければ何をやっても良い訳が無い。むしろ強くなったからこそ行動一つ一つで自身の積み上げて来た努力、恩義を下さった方達に泥を塗ってしまう様な行動は慎みなさい。その強さはあなた一人で積み上げた強さじゃ無い。ギルド職員は勿論関わった全ての方達、奪って来た様々な命の末に今の貴方達の強さがあるのです。恥を知りなさい」


 自然と出る言葉は、目を閉じると鮮明に思い出す在りし日のクロ様の姿そのもの。

 そしてセラはゆっくりと目を開くと言葉を続ける。


「ギルドにハウスルールという法があって良かったですね?」

「………へ?」

「分からないのですか? ハウスルールが無ければ今貴方達は死んでるかもしれないのですよ? これは言わばギルドが貴方達の命を金貨で救ったんです。だと言うのに金貨を払えないなんて………言わないですよね?」


 そして耳元で「貴方達の命など簡単に奪えるんですよ?」とトドメを刺す。


さらにセラはにっこりと花が咲くという言葉が似合う様な笑顔でギルド職員に向くとこの件で生じる金貨十八枚を簡単な手続きをした後それを受け取りギルドを後にする。


 ちなみこの金貨は即金で用意できない彼等の代わりにギルドが所有していた金貨を当然利子付きで立て替えた物である。


 ここから這い上がるも返済出来ずギルド側から冒険者資格剥奪されるも彼等次第だろう。


 そしてセラ達がギルドを出た瞬間、ギルド内は夢から醒めたかの如く一気に様々な感情の声が湧き上がるのだった。

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