第395話抜かりない娘である

 いっそ懲らしめてやるべきか?と思っていると奥の方から「お前達、やめるっすっ!」という掛け声と共にギルド職員のお姉さんが長く綺麗な金髪をなびかせながらこちら側まで走ってくると俺と男の間に割って入って来る。


 因みに顔はその長い金髪で隠れて見えないのが惜しいが、走って来る時に隙間から僅かに見えた顔からして少なからず美形であろう事は伺える。


「あ? そばかすのミランダ・フレムさんには関係ない話だろ? 今俺はこいつに人生の先輩として大事な事をグボっ!?」

「さっきから聞いていれば女性に対してその物言いは何だ? 何が人生の先輩だ? 人から乞食のように物乞いし最終的に奪う事を平然とやってのける時点でお前は人様に先輩面出来るほど出来た人間じゃないだろ。もしお前が本当に人様に先輩面出来るほどの人間だとすれば自ずと女性の方からやって来るし物乞いもしなくても済むはずだ」


 今までの言動で溜まったヘイト値が先程俺と男の間に割って入って来た女性の事を明らかに馬鹿にした言動で振り切れたみたいである。


 そして言いたい事を怒りに任せ吐き出すのだが、その間男が襲いかかるのでその都度殴り返していく。


「………お怪我は無いですか? お嬢さん」

「…………お、王子様……」

「へ………?」

「はっ!? い、いえ何でも無いっす……無いです! そそそそ、それでは!!」


 鳩尾に三発目を食らわした所で件の男は床に踞り呻き出してしまい動かなくなったのでミランダと呼ばれていた女性に一応社交辞令としてどこも怪我は無いと知っていつつも声をかけてあげるとミランダは一気に顔を真っ赤にさせ、狼狽えながら顔の前で両手をバタバタとクロに向けて振り乱した後、脱兎の如くギルド職員しか入れない扉の向こう側へと消えて行く。


 その間自分のプロフィールと今日デートの誘いが書かれた紙切れをクロに渡して行く辺り抜かりない娘である。


 しかしその紙に書かれた内容を読んで逆ナンと捉えるかどうかはクロ自身は認めていないのだが女性陣から良く唐変木と言われるクロ次第であろう。


 その紙を眺めていると、ギルド職員から呼ばれたのである意味で良い暇つぶしだったなとクロは更新したギルドカードを取りに呼ばれた受付嬢のいるカウンターまで行くのであった。

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