第396話寿退社した先輩の偉大さ

 ミランダ・フレムは今ギルドの仕事を夕方の職員に引き継ぎ、今日の職務を終えるとあの男性に渡した紙に書いてあったレストランの前に、相変わらず顔は髪で隠しているのだが久し振りに粧し込み自分なりにお洒落をして立っていた。


 しかしその姿は挙動不振であり落ち着きが無い。


 そもそもミランダは男性経験がなければ逆ナンも勿論経験は無いのである。挙動不振にもなろう。


 しかし、あらかじめプロフィールとデート場所を書いている紙を所持しておく事と教えてくれた、今年寿退社した先輩の偉大さを改めて実感する。


 渡すだけで良いのだ。話す事もそこから駆け引きする事も無いのである。


しかしながらこんな見た目の私の誘いに来る筈がないとも思う。


 だが、初めてなのだ。自分を異性として見てくれた男性は……。


 そんな物好きが世界に一人いてもバチは当たらないだろうとミランダ・フレムは思う。


 そんな諦めてはいるものの期待を持っているが故の挙動不振でもある。


 勿論性格的な部分もあるのだが。


 そして待ち始めて三十分程時間が経った時、お目当の男性がこちら側へ向かって来ている姿が見え、ただそれだけで泣き出しそうな程嬉しいのだが、その男性がただこちら方面に用事があるだけの可能性も考えてしまい不安と期待でミランダの心臓は激しく鼓動を打つ。


「もしやと思って来てみれば………はあ、来て良かったよ」

「あううっ!?」


 そしてお目当の男性は私の前までやって来るや否や安堵の表情を浮かべると、私の頭を乱暴にクシャクシャと撫で始める。


 私が想像していた、良く同僚から聴くデートでの異性とのやり取りと違うと思いながらも、乱暴ながらも撫でられて満更でもないと思ってしまう。


「全く、見た感じ十七そこらの女性が見知らぬ男性をこんな夕方に呼び出すなんて危険だと思わなかったのか? 俺が来ない事も考えてたのか? ……さすがにギルド職員であるミランダさんが美人局なんてするとも思えないし……」

「す……すみませんっす……で、でもこうして来てくださいましたっす!! それに……自分みたいなブサイクが美人局なんてできないっすよ……」


 やはり、お目当の男性は自分が思った通りの男性だった。


 しかし自分でもちゃんとブサイクだと理解してはいるのだが、理解している分口に出すと余計虚しく感じてしまう。

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