第366話例え話をしましょうか

 それに遅れない様に私とメアリーがスフィア・エドワーズ姫に速度重視の魔法を間髪入れずに攻撃、着弾を確認すると一旦様子を見る。


「その程度の魔術じゃ私にダメージは与えられませんよ? 旦那様曰く魔術の場合段位六以上、スキルの場合高威力ではないとダメージは通らないらしいのですが、どうやら本当のようですね」


 そう言うとスフィア・エドワーズ姫は氷柱を私達目掛けて飛ばして来た。


 その氷柱はガーネットが張ったシールドをいとも容易く貫通し、私達の頬を掠めて行く。


「凄いですよね、この装備。 防御面だけでなく魔力攻撃力身体能力全てが跳ね上がってるんですよ。 私の旦那様は此れ程の装備を其れこそ捨てる程持っているんですよ?」

「………な、何が言いたいのですか?」

「クロ・フリート様の配下にはどの程度の種類の人種がいると思います?」

「………ほ、ほとんど魔族なのではないのか?」

「いえ、人間、魔族……そして精霊種に竜種とこの世界での人口とほぼ同じ割合で知能が高いと知られている種族がいるそうです。 すなわち一番多い種族は人間、次に魔族、精霊種、竜種という割合でクロ・フリート様の配下がいるようです」


 クロ・フリートの配下は人間が一番多いという嘘とも思える統計に、しかし私の心情を察したのかスフィア・エドワーズ姫の目が真実であると訴えかけて来る。


「そして、クロ・フリート様の配下であるお方達は……セラ様達と会ったらしいですからご存知かと思いますが想像を絶する強さをお持ちの方達が多数存在いたします。 特に強さ順でナンバー十二までの方達はそれ単体で国落としぐらい余裕でしょう。 ちなみにセバスチャン様は百二十番目だそうです。 そしてセラ様達はクロ・フリート様のパーティーメンバーに選抜されておられますが、あくまでもクロ・フリート様メインで作られているパーティーメンバーですので純粋な強さで言えばイフリート様やイルミナ様などセラ様より上であるお方達もいらっしゃるようです」

「お、脅しですか?」

「………例え話をしましょうか」

「た……例え話ですか……?」


 スフィア・エドワーズ姫の言葉を脅しと受け取った私はそれをそのまま口にするのだが、スフィア・エドワーズ姫はそれを肯定するでも否定するでも無く悲しみを帯びた目を向け語りだす。

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