第365話ド直球で本人にぶん投げる

 それにしても、建物一つ見てもやはりクロ・フリートは日本人ではないにしろ日本を知っている魔族と考えて良さそうだ。


「皆様方体調の方は良くなられましたか?」


 そんな時、ノックと共にクロ・フリートの婚約者の一人であるスフィア・エドワーズ姫が現れ、我々の体調をわざわざ気遣ってくれる。


 しかし同時にその気遣いが心苦しくもあるので嬉しくはあるがどうしたものかと思ってしまう。


「スフィア・エドワーズ姫は………クロ・フリートの事を憎んでいるのでは無いのか?」


 そして私達が心苦しく感じてしまう最大の原因であるクロ・フリートとの婚姻を、亡国の姫としての感情を思えばこそなのだが、そこは空気の読めないガーネットである。


 その事をド直球で本人にぶん投げる。


「………あー……正直言うと父上の思想や価値観は私には耐え難いものでしたから、混乱に乗じて亡国にしたのは私ですし、旦那様……クロ・フリート様を国王にするように仕向けたのも私ですし、そしてクロ・フリート様と婚約するように仕向けたのも私ですからねー……計算通り過ぎて幸せですかねー?」

「………は?」


 しかし、開けた箱はまさにパンドラの箱であるかの如く他言できようも無い真実がスフィア・エドワーズ姫自ら「他人に言える様な内容じゃ無いから」と嬉々として語られて行く。


 その事から誰かに話したくて仕方なかったのだという事が嫌が応にも伺えてくる。


「それにこの装備見て欲しいのだが! 旦那様の所有している装備なのだが、今の私なら冗談抜きで勇者一行にだって負ける気がしない!」


 興奮の余り口調も砕け素の喋り方が出てしまっているスフィア・エドワーズ姫なのだが、完膚なきまでに力の差というのをクロ・フリートに見せ付けられたばかりといえど私とて勇者の端くれ。


 たかが装備を変えただけで、以前手合わせした時の強さから考えて私だけでなくパーティを相手にしては幾ら何でもスフィア・エドワーズ姫一人では勝てるはずが無いだろう。


 そう思っていたのだが私達の目の前にはいつの間にか三本の氷柱の先端がそれぞれのひたいを向いた状態で現れていた。


 すぐさま動いたのはガーネット。


 素早くしゃがみこみ氷柱という弾丸の軌道から避けると私とメアリーに不可視のシールドを展開。

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