第362話何卒

 そのことによりこの魔道具の所持者、少なくとも彼女達の主はこの世界の住人ではなく私と同じ世界から召喚された者である事は間違いないだろう。


 しかし、私が驚いている事はその事ではなく、彼女達が使っている魔道具は明らかに正常に作動しているにも拘らず本来なら使用している魔力石から発生する微力な魔力を一切関知できないのである。


 それはテレビをつけている時に感じる微妙な違和感程度のモノなのだが、七つの大罪のグリードを発動し、さらに魔力増殖炉まで発動させている私がいくら微妙だからといって感じない事は有り得ないのである。


 もし本当にあの魔道具が魔力を一切使用しないとすればそれはとんでもない発明であることは間違いないであろう。


 そし彼女達は話し合いを終えたのか例の魔道具を何もない空間に仕舞うと、次の瞬間には漆黒かつ豪華な巨大な門が現れ、地響きにも似た音を奏でながら開き始める。


 ほぼ間違い無く人間であろう三人だけではなく白と黒の天使、ルシファーとセラまでもが片膝を付き頭を垂れている姿を見るからに、今この門の向こう側にいる者は間違いなくこの者達の主であろう事が伺える。


「異世界から召喚された勇者というのはお前たちで間違いな―――」

「クロ様あああああっ!! この! クロ様と! 一緒に! まるで! 夫婦と! 言わんばかりに! 親しく! 密着している! お方たちは! 何者なのか説明してくださいっ!! 何卒!! 何卒おおおおぉぉぉぉぉ!!」


 そして複数の美姫を引き連れ恐らくクロ・フリートと思われる男性が門の向こう側からやってくると、私達が侵略して来た勇者達である事の確認を行おうと口を開いたその時、白の天使セラが目を血走りながら物凄い形相でクロ・フリートに詰め寄るとクロ・フリートと一緒に現れた美姫はいったい誰なのか激しく詰問する。


 その間クロ・フリートはセラに揺さぶられ頭を激しく上下に揺さぶられていた。


「わかった! わかったから一旦落ち着けセラ!」

「これが落ち着いていられますか! 事と場合によればすぐさま始末致しますぅぅぅぅううううっ!!」


最早その顔だけ見れば天使と言うよりも般若に近く、今にもクロ・フリートの側にいる女性達を取って食いそうな勢いである。


「ねえクロ様ねえクロ様ねえクロ様クロ様クロ様クロ様クロ様クロ様クロ様ぐうええっ!?」



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