第345話薄っぺらい板の様な物

 私とサラが両手を組み睨み合っているとターニャというクロの婚約者の一人が私達の間に入り魔道具で先程の戦闘を保存していると説得しだす。


 その様な魔道具は映像を保存する水晶しか知らず、とても高価なものである。


 そしてもし本当に映像を保存できていたとしても一度しか観れず私達の為だけに使うのは勿体無いのではないかと思う。


「ナイスですターニャ! では早速観させて下さい!」

「分かりました」


 しかしサラはその映像をすぐにでも観たいとターニャに催促し、ターニャがそれを了承する。


そしてターニャが出した魔道具は水晶ではなく、薄っぺらい板の様な物を取り出してサラに渡すのが見えた。


 あんな板で映像が保存される訳がないだろうとは思うもののサラの態度から完全に否定する事も出来ずにサラの後ろからそのタブレットという板を覗き込む。



◇◆◆◇



 戦闘開幕から30分は経っただろうか?


 クロ、バハムート共に段位や威力の高い魔術やスキル使うと砦にまで被害が出る可能性がある為お互いに使用できない状況下の中でクロがジワジワと追い詰められていた。


「二対一な上に高段位や上位スキルを使えないという状況下とは言え主人に勝てるかもしれない日が来るとはな! 勝った時を想像するだけで興奮してしまうわ!」

「どちらにしても私達の攻撃をこれ程までに躱し、その上で反撃できるほどの相手なのです! 油断は禁物です!」


 クロに勝てそうという状況にバハムートは興奮を隠す事もせず、それをスフィア・エドワーズが落ち着く様に嗜める。


 しかしバハムートが興奮するのも無理無く、今の状況ではバハムートとスフィア・エドワーズの勝利は揺るがないだろう。


 長年クロに勝利する事を夢見ていたバハムートが興奮してしまうのは仕方ない事であろう。


「確かにこのままでは負けるだろうな」


 バハムートとスフィア・エドワーズはお互いの短所を補い、隙という隙が見当たらなく、正に理想の立ち回りであろう。

 しかしバハムート同様、クロとてこの世界に来て何もしなかった訳では無い。


「投了しても良いのだぞ? 主人よ」

「馬鹿言え。 今からお前達は俺の実験台にさせてもらう」


 そしてクロは一瞬にして装備一式を変更し、移動スピードと攻撃スピードを上げる装備とアクセサリーに装備し直す。


 すると装備一式の恩恵を受けたクロは先程までの移動スピード、攻撃スピードよりも数倍の素早さで駆け攻撃する。

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