第343話規格外にも限度というものがあるだろう

 それもそのはずでサラは目の前で戦っているクロをあのクロ・フリートだと言ってのけたのである。


 驚くなということは無理な事であろう。


 しかしあのクロ・フリートは魔族であり立派な二対の角と翼が生えていると聞いているためサラの発言を素直に信じる事は出来ず、寧ろ冗談の類であると考えるのだが、目の前で戦っているクロの姿を見ると少なからずその可能性を感じてしまう。


「普段は人間の姿なのですが、本気を出す時は本来の姿になり強さも跳ね上がるんですよ。 ですから未だ人間の姿で戦っているクロはまだ手加減している状況と言えますね」

「……な……ん…だって……?」


 開いた口は塞がらないとはこの事だとフレイムは思う。


 手加減してこの強さだと言うのか。


 規格外にも限度というものがあるだろう。


「アーシェ・ヘルミオネと互角に渡り合ったと聞くが、今目の前で戦っているクロを本気にさせた上で互角と聞く………お互いに化け物ではないか」

「だからクロ一人で国落としができると言ったでしょうに。 思えば私達人間は一歩間違えばアーシェ・ヘルミオネを怒らし、牙を向けてしまうような事をしてきたのだと思うと今更ながら恐怖を感じてしまいます」


 もはや乾いた笑いしか出てこない。


 サラの言う通り我々は今までとんでもない奴を相手に喧嘩を売っていたのだと思い知らされサラ同様、今更ながら恐怖が込み上げてくる。


 たとえ私が魔族や亜人に対し差別意識が無いとしても戦争の前ではその意味すら持たず、トップの人族至上主義という大義名分を掲げられ戦わされていただろう。


 それが戦争であると分かっているだけにフレイムが感じる恐怖は生半可な物では無い。


「しかし、それもスフィア・エドワーズ姫自ら国王であり父親でもあるドミニク・エドワーズの背中に一太刀入れられた上に、元々高い税金を課していた為国民の暴動が起こり国外への逃亡を余儀なくされた所にクロ・フリート率いる軍が少数気鋭の部隊を投入し侵略されてしまい当然の如く敗戦し、もうすぐ新国家が出来るみたいだしな。 どうなる事やら」

「………………え?」

「……え?」


 サラを見ると顔に脂汗を流し小刻みに震え始めているのが分かる。


 どうやらサラには珍しくギルドで得られる情報をここ最近得ていないみたいである。






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