第334話漏らした・ヤバイ・どうしよう

「ヒュドラなら俺の奴隷であるアルが先程倒したところだ」

「ふむ、そうであったか」


 相変わらず優雅に佇んでいるスフィア・エドワーズ姫の後ろで黒竜とクロが談笑する姿が見える。


 その光景に自分の下腹部が生暖かく感じる事も含めて夢では無いのかと思わずにはいられなかった。


 サラの方を見ると、サラも私の方を同じタイミングで振り向いたらしく目線が合う。


 言葉は発しないものの目線で「漏らした・ヤバイ・どうしよう」と語っているのが理解でき「水魔術・全身・濡らす」と返答しておく。


 すると次の瞬間には自分とサラは頭から水魔術段位一程度の魔術でさり気なく濡らすのだが、一番バレたく無かったクロにはお見通しだったらしくストレージからタオルを二枚出すと私とサラに渡してくれる。


 その優しさが今は辛く、今すぐにでもこの場から逃げ出して現実逃避したいぐらいの恥ずかしさでどうにかなってしまいそうである。


 恐怖でサラと私は腰を抜かしてこの場から逃げ出す事も出来ないのが今の現状なのだが、その原因である黒竜はスフィア・エドワーズ姫を乗せてここまで来た事とクロと談笑している内容からクロ直属の配下であり、我々を攻撃する様な事が無い事が分かる。


 黒竜が直属の配下というのも前代未聞なのだがあのアル・ヴァレンタインを奴隷として傍に置いている事からもありえなくは無いかと思え始めているあたりフレイムの中の常識が軽く崩れていっているのだろう。


「バハムート……私をクロ・フリート様に紹介して欲しいのだけれど?」

「おお、そうであった。 一応言っておくが突然の主人との再会で感極まりスフィアの事を忘れていた訳ではないぞ? わが主人よ、ここにいるのが今まで一緒に旅して来た友であるスフィア・エドワーズとう名の娘である」

「絶対忘れてたでしょう? まったく………お初にお目にかかります。私は元グルドニア王国元姫であるスフィア・エドワーズです。 お見知り置きを」

「クロ・フリートだ。 バハムートが世話になったようだな」


 先程まで恐怖の化身であった、スフィアがバハムートと呼ぶ黒竜とスフィアが漫談をこなすと軽い挨拶を済ますのが見え、やっと心のそこから安堵できた気がした。

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