第333話慟哭に近い心の叫び

「わ、私はゴリラじゃ無いわ! 私がゴリラならサラはオークじゃないか!」

「な、言うに事欠いてオークですって!! 死にたいみたいですね!? フレイム!」

「まだゴリラより知能が高いあたり考慮してやってんだよ! どの道独り身な時点で私の負けなんだ! だったらサラをオークといっても良いじゃねーかよ! そこしか勝ち目無いんだからよ! 良いよな!? サラには相手がいて!」

「…………その……ごめん」


 それはもう慟哭に近い心の叫びであった。


 涙を流し鼻水を垂らし叫ぶ私を見てサラは物凄く気不味そうに謝って来る。


「謝るぐらいならー」

「嫌だ」

「………おい」

「だ、だってこれ以上クロとイチャイチャする時間が減ってしまうと…………」

「減ってしまうとどうだっていうん……だ………なんだあれ? まさか……いやでも……」


 クロがどんな目で私達を見ていたか分からずにサラと言い争っていると、サラがいきなり言葉に詰まり、サラが言葉に詰まってしまう原因を私も目視で確認してしまい言葉に詰まってしまう。


 その原因は私達のいる周囲を、太陽光を遮った事で出来た影で侵食していく。


 ああ、死んだんだな。


 と素直に思えるその巨躯をもって優雅に飛行する伝説の域に達しているだろうソレを目に、もはや恐怖は無くそこにあるのは圧倒的な死のみである。


「え、エンシェント……ドラゴン………しかも黒い……個体」

「こんな奴が存在するなんて聞いたことが無いんだが……」


 今目の前に音も無く舞い降りたソレがまだ白竜であったのならば私達は死ぬことは無かっただろう。


 しかし美しくも艶やかな黒い鱗で全身を覆ったその巨躯はまさに死の化身であろう。

 隣のサラを見ると腰が抜けたのか地べたに座り、サラを中心に何かが染み出し広がっていくのが見える。


 そういう私も膝から崩れ落ちてしまい、なんだか股の辺りが生暖かく感じてしまう。


「お久しぶりです、フレイム・フィアンマさんにサラ・ヴィステンさん」

「おお、わが主人ではないか。 ちょうど良かった。 先程ここら辺に逃げたであろうヒュドラを知らぬか?」


 そしてその巨躯を持つ黒竜から何者かが飛び降りて来ると私とサラに、まるで貴族のそれのように様になった動作でもって挨拶して来る。


「スフィア……」

「エドワーズ姫……?」


 それもそのはずで、私達に声をかけてきたその者はグルドニア王国の姫であり私のライバルでもあるスフィア・エドワーズであり、正真正銘の王族である。


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