第328話オモチャを与えられた犬の様

「回復魔術をフレイムに施すだけでも大分違うと思うのだが?」

「………か、勝手にしろ」

「貴殿の英断に感謝する」


 衛兵はクロが回復魔術を、それも骨折を瞬時に治せる程の威力がある回復魔術を使える事に驚愕する。


 それはもはや上位神官レベルの回復魔術である事は間違いなく、その魔術を使えるというだけでクロ達を止める術が思い付かない。


「さて、ヒュドラがいる場所まで行ける許可も得た訳だし、アルに俺の装備を貸し付ける」


 そしてクロはアルに自分が持っている目の前のヒュドラに最適な装備一式を、クロ自身どういう原理か分からないのだが一瞬にして装備させる。


 装備させたアイテムは当然全て課金ガチャで手に入れたアイテムで性能もレアリティも申し分ない高価な物である。


 装備させた内容は、アクセサリー1【毒無効・炎ダメージ+30%UP】アクセサリー2【HP30%以上の場合即死回避・炎ダメージを与える度にバリア展開】防具【炎ダメージ+100%UP・自身が受けるダメージ30%カット】武器【炎ダメージ+100%UP・与えた炎ダメージ30%ドレイン】とかなり尖ってはいるがあのヒュドラにはぶち当たるであろう。


「俺はアルの邪魔にしかならないフレイムを強引にも下げさせる。 アルはフレイムと入れ替わり次第思う存分暴れてこい」

「分かった!」


 クロが装備させたアイテムを全身装備しているといってもヒュドラ相手に一人で戦えと言われはち切れないほど犬の様に尻尾を振るアルはプレゼントを前にした子供の様な表情を浮かべていた。


 そんなアルを見ているとオモチャを与えられた犬の様に衛兵は錯覚してしまう。


 ヒュドラをオモチャ扱いなど出来る筈がないという彼の常識は、きっとアルと呼ばれている奴隷女性は何も知らないのだろうと推測し、憐れんでいる事など当の二人は知る由もない。


「何故来た!? 邪魔だ! って、ひゃわっ!? は、話せ!!」


 ヒュドラのいる場所に着くやいなやフレイムから怒鳴られてしまう。


 しかしフレイムの性格からして予測の範疇である為さほど驚きもしない。


 そしてすぐさまフレイムを魔術で拘束し、そのまま砦の反対側かつ安全地帯までお姫様抱っこの要領で一気に下がる。


 それに反応したヒュドラはその巨躯に似つかない程の初速を持ってして獲物を取られまいと追いかけるのだがトップスピードに入る前にアルによる霊魂焼却に呑まれ足を止めてしまった様である。

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