第五章

第327話ヒュドラ

「ヒュドラか………ヒュドラというとここの戦力で倒せるのか?」

「多分ギリギリでしょう。炎属性に強いヒュドラの場合フレイムでもってしても三日以上の戦闘は避けられないかと」

「そうか……もし、お前達が参戦すればどうなる?」

「まずヒュドラの毒を無効に出来る程の炎属性の攻撃を撃てるのはアルしかいません。ですのでアル以外は足手まといどころか毒で死にかねません。その事から1日以上、三日未満といったところでしょうか?」

「ふむ……」


 サラはあのヒュドラと戦えるのは今この砦にフレイムとアルの二人しかいなく、この世界ではトップレベルの実力者二人でもってしても1日以上かかる事を説明する。


 その間にも砦の外、荒れ果てた荒野の向こう側から肉眼では米粒ぐらいにしか見えないヒュドラが九つの頭を振り回し、毒霧の様なブレスを吐いているのと、時折真っ赤な炎に包まれる様子が何とか見え、地響きの様な低重音が轟音となって空気を震わしクロの髪を揺らす。


「そうか……なら俺が出るか。アル、お前も来るか?」

「おう!ご主人様と共に!」


 しかしそんな光景を前にクロが思った事は「ヒュドラってそんなに硬かったけ?」ぐらいで災害級の説明は逆にクロをその気にさせるスパイスにしかならないみたいである。


 そしてクロはまるでコンビへ行くかのようなノリでアルと一緒に監視塔から砦の外へ飛び降りる。


「おい貴様! 何をしている!? 早く砦の中へ戻れ!」

「却下だ」


 しかし砦の外に降り立ったすぐ先にいた衛兵に見つかり咎められるのだがそれを無視して衛兵を押し退けて先に進もうとする。


「ダメだ! お前達が行ったところでフレイム様の邪魔にしかならない! フレイム様がやられればこの砦もタダじゃ済まないんだぞ!?」

「だからご主人様は行くんだろうが。 退け、邪魔だ。」


 しかし当然そんなクロ達を衛兵はクロの腕を掴み強引に引き戻そうとするのだがアルが無詠唱で唱えた火の玉を喰らい吹き飛ぶ。


「やめろアル。 こいつは何も間違った事はしていない」

「わ、分かったよ」


 そんなアルをなだめながらアルの魔術で吹き飛ばされ砦の壁に激突し呻いている衛兵に回復魔術を施すと先程アルが行った事を謝罪する。


 肋骨が折れたのか脂汗が顔に浮き出し始めていた衛兵は突然痛みが消えた事に驚きを隠せない表情でクロ達を見る。

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