第316話問題は案内された部屋

「我々はあなた達の様に強くありません。子供…幼生体達は一人で生きて行く術も無く我々成体がしっかりと面倒を見てあげなければなりません。また我々は精神すら非常に脆くそれが幼生体なら尚更弱く、しっかりと愛情を注いであげる必要があるのです」

「ほう、脆いものなのだな。風が吹くだけで死ぬのではないかと思えてしまうほどである……しかしそれはおかしな話だな。そなたはこの私よりも強いであろう」

「皆が皆赤竜の様に強くなる訳ではありません。何もせず普通に暮らすだけで強くなる赤竜と違いそれ相応の経験を積まなければならないのです。その経験を積んできたとしても一握りの者しか赤竜すら倒すほどの力を得る事は出来ないでしょう」


 イルミナとドドルグとの会話で私だけではなく周りの赤竜達までもが信じられない者を見るような目でイルミナを見始め、辺りは騒めき始める。


 二人の会話から赤竜の長ドドルグよりもイルミナの方が強いと言っている様にしか聞こえず私や赤竜達は耳を疑う事しか出来ない。


「では世間話はまた後で聞くとして……トトよ、あの者達に部屋を案内してあげなさい」

「はい。畏まりました」


 周りの騒めきを知ってか知らずかドドルグがイルミナとの会話を一旦止めると、少し後ろにいたトトという比較的小ぶりでスマートな赤竜を呼ぶと私達の部屋を案内するように命じる。




「こちらの部屋でございます。ごゆっくりとどうぞ。タマ様は奥の部屋でございます」


 部屋を案内し終えたトトはタマの顔を見て一瞬だけその長い舌を蛇のように出すと、自らがした行為にハッとし逃げるようにその場から離れて行く。


 その行動を見たタマは「ふむ……」と頷きそのまま案内された部屋へと入って行く。


 先程の舌を出すという行動がどのような意味を含んでいるかは私には分からないのだが、今はそんな事よりも問題は案内された部屋である。


 まず、想像はしていたのだがとにかく何もかもが大きい。それこそ部屋に置いてある食器類が大きいのだがそれを置いてあるテーブルまでもが当然大きくお茶を入れるだけでもまずは目の前のテーブルを登らなければならない。


 そして部屋自体も当然のように大きく、部屋が大きいという事は扉も大きいという事でドアノブそのものを触れない。

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