第315話頭から火が出るほどの羞恥心
そして両端にはズラリと赤竜が並びその最奥には周りの赤竜よりも数倍は大きく見える赤竜がその巨躯で蜷局を巻く様にこれまた巨大な椅子に居座っているのが見える。
その赤竜達のちょうど真ん中付近には赤竜には似つかない、しかしその身体に白銀の装備をしている事により様になっているピシリと直立している赤竜、タマの姿がそこにはあった。
周りの赤竜達は私達に鋭い視線を浴びせ、タマはイルミナに向け恭しくこうべを垂れる。
その中をおっかなびっくりしながら何とかタマのいる場所まで歩いて行くのだが緊張しているのはどうやら私だけみたいで、子供達はタマの姿を真似てかまるで騎士になったかの様に歩き出し、イルミナは普段通り歩いていた。
「………よく来たな小さき者よ」
「突然の訪問、失礼しました」
「よいよい。こんな辺境の地まで来る者と言えば同じ竜種ぐらいしかいないもんでな、たまにはお主らみたいな者が来てくれた方が退屈せんですむ」
「寛大な処置、ありがとうございます」
タマがいる場所まで行くと一向に頭を下げようとしないイルミナ達に周りの赤竜達が殺気立つのだが、巨大な椅子に蜷局を巻く赤竜が先に口を開きイルミナ達訪問を快く思っている事を口にする。
その言葉に周りの赤竜が騒めくものの誰も異議を唱える者は現れなかった。
「そう畏まらんでも良い。ではそうだな……まずは自己紹介といこうか。儂はここの長をやっているググル・ググルグと言う。他の部族からは初代赤竜王の再来と言われている。だが実際はただの老いぼれに過ぎぬ。気軽にググルと呼んで貰って構わない」
「ありがとうございます。私はイルミナ・フリートと申します。隣にいるのは私の女中にあたるエマです」
「私はノクタスギルド職員のラーベル・ヴィストと、もも、申しますっ!」
イルミナが連れて来た奴隷が静かに頭を下げた後、私もイルミナやググル同様に名前を名乗るのだが勢い余って噛んでしまう。
頭から火が出るほどの羞恥心に襲われるのだが、そんな事など御構い無しに子供達が次々と大きな声で自分の名前を名乗って行くのが聞こえてくる。
「実に元気で良い事だな。して、そなたらは自分の幼生体達をその様に手元に置いて育てるのか?我々はすぐそこの山の麓に成体になるまで身一つで生活してもらうのだがな…」
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