第317話そして今私は風になった

 案内してもらった赤竜トトに促されるまま部屋に入ったは良いもののこれは監禁というものではないのだろうか?と、頭上の上にあるドアノブを見ながら私は脂汗をかきこの世の終わりかという表情をしていた。


 と、トイレと説明受けた部屋に……入れない!!


 全てのドアノブがはるか頭上にあるという事はそういう事だと今更になってその危険性を知り能天気に「いろんな物が大きいなー」とか言っていた頃の自分を助走した上でジャンプし蹴り飛ばしたい気分である。


「何絶望したような顔をしているのよ……」

「い、イルミナさん……と、ととと…トイレ…」

「はあ……トイレは分かったのですが入らないの?………あードアノブに届かないと言いたいのですね………そんな事もあろうかと私が先程カードから出した部屋でもトイレはありますが………?」


そして今私は風になった。





 赤竜の村に来て三日、ついにタマとリュースの決闘が行われるようである。


 リュースがタマに決闘を申し込んだ日から村の東端にある荒地を複数の赤竜が三日三晩かけて削りならし平らにしてできた闘技場は赤竜達にとって神聖な場所である。


 赤竜達は大事な事は決闘で決める風習があり、その度にこの荒地を闘技場にしている為溝は深まり巨大な窪みのような作りになっている。


 そんな闘技場には今数多くの赤竜がタマとリュースの決闘を見に来ている。


「俺が勝ったら貴様が使えるスキルを何か一つ教えてもらおう」

「……一つで良いのか?」

「……っ、おまえはつくづく規格外なのだろうな」


 その歴史ある闘技場の中央で今タマとリュースがこの決闘の報酬を話し合うのだが、価値観の違いをお互いを確かめる形になってしまう。


 そして今度はタマが勝った時の報酬を言うとリュースは一瞬固まったあと大笑いしてしまう。


「良いだろう。俺に勝ったらくれてやろう。もとよりそのつもりだったしな」


 開始の合図は審判である赤竜の咆哮。


 咆哮が闘技場を震わせた瞬間リュースは姿勢を低くし低空でタマ目掛け飛び立つ。


 その動きは洗練された動きでありリュースの強さが分かる。


「………くだらん」


 しかしその動きはあくまでも村にいる赤竜の中で通用するレベルでありタマからすれば子供の児戯にも等しいレベルである。

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