第313話そこには世界が広がっていた

 そういうとイルミナは子供達一人一人デモンズゲートをその親がいる場所へと繋げて行く。


 子供達への対応もそうなのだがそれだけでは無く一人一人の親御さんに対し低姿勢で丁寧に接しているところからイルミナという人物がどの様な者なのかその人となりが垣間見えた気がした。


 子供達の親御さん達もそんなイルミナに全幅の信頼を持っているのか子供達は全員親御さんの許可が降り、数日分の着替えを用意して貰いゲートを駆け足でくぐって戻ってくる。


 その表情は初めて竜を見た時以上にキラキラと輝く者や、親と離れて野外というのに不安を隠せない者など様々である。


そんなこんなでイルミナ達は行きの時と同様にタマが向かった場所までコッコちゃんに運んで貰う。


今までラーベルはコッコちゃんにより空中を移動していた時から緊張で外の景色などを楽しむ余裕など無かったのだが、空中を移動する事よりも赤竜の村を訪れる事よりも親と離れて外泊するという方に緊張している子供を見るとその子供特有の価値観から来るチグハグさに自ずとラーベルの緊張感は和らいでくる。


言い方を変えれば麻痺したとも言うのだが。


そして改めて竜籠に備え付けられている窓から外を眺めて見るとそこには世界が広がっていた。


「ふわぁ……綺麗」


その景色は言葉に出来ない程美しくラーベルは子供がそうする様に一緒になり窓に張り付き目に焼き付けるのに必死になってしまう。


下を眺めれば建物一つ取っても人間の住む家と比べて数十倍は大きく圧迫感があった家々のある村が小さく見え、それはそれで別の感動を感じ、この村に来るまでもっと眺めておけばと良かったという後悔も同時に芽生える。


その為帰りはちゃんと観ようと思うのであった。


空を十分程移動した所でタマがホバリングしている場所に着き、そのままタマとコッコちゃんはゆっくりと村の中でも頭一つ大きな建物の屋上へ下降する。


人間の村と違い空も移動手段の一つである竜の村ならではといった感じでほとんどの建物の屋上には確認しやすい様々な色の印が施されており、また下の階へ通じる小さな小屋が備え付けられている。


それがまた空では美しくラーベルの瞳を輝かせる要因の一つでもあったのだが、その中でも今降り立とうとする建物の印は唯一赤色で彩られおり特別な建物なのだと一目で分かる様になっている。


「コッコちゃんありがとう」

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