第312話決闘を申し込む


「度々うちのタマが申し訳ない。 一応ヒールをかけて傷付いた箇所は治させて頂きました」

「…………」


 そしてイルミナは今一度赤竜に詫びをいれるのだが、その赤竜は心得るここにあらずと言った感じでイルミナの詫びに反応出来ないでいるようだ。


「…………貴様、タマとか言ったか」

「俺か? 俺は確かにタマだが?」

「公式に貴様へ決闘を申し込む。 決闘を受けるのなら準備等に数日かかる為それまで貴様らをこの村に滞在する事をこのリュースが許そう」


 タマに倒された体制のままで数分ほど経過した時、赤竜はゆっくりと立ち上がり何を思ったのかタマに決闘をもう仕込んで来た。


「………分かった。 決闘を受けよう」


 突然赤竜のリュースから決闘の申し込みをされタマは一瞬困惑したものの、イルミナに一度視線を向け受けて良いのか確認した後、タマはリュースの決闘を申し込む事にした。


 にしても突然の手のひら返しとも言える好条件に困惑しているのはタマだけではなく私やイルミナも多少なりとも困惑していたりする。


「貴様らに宿を提供する前にこの村の長に挨拶しに行く。 ついてこい」


 そんな私達の心情など微塵も理解出来ていないだろうリュースが付いて来いと勢いよく青空へ飛び立つ。


 その姿を見て連れて来た子供達は「カッコイイ!!」と歓声をあげているのだから心強いのだが、それ故に変な面倒ごとを持って来ないか心配でもある。


 無邪気に赤竜の村を眺めている子供達を見てノクタスへ帰ったらもう遅過ぎる気もするのだが竜の危険性を一度教え込まなければならないと心に誓う。


「タマは先に行っててちょうだい。 後でコッコちゃんと向かいます」

「畏まりました」

「では、はーい! ちびっこ達ー! 集合ー!」


 そしてイルミナはタマを先に行かせると子供達を自分の元へ呼び集める。


 子供達は子供達で元気にイルミナの元へと駆け寄って行く。


 ここだけ見れば遠足に来て居る子供達と引率する保護者のほのぼのとした日常にしか見えない為つい気が緩みそうになるのだが、少し視線を外し意識して周囲を見渡せば金色に光る複数の目が閉ざされた窓や扉の隙間から確認出来、緩みそうな気が一気に引き締められる。


「みんな居るねー? ………うん、良し。 どうやら数日間この村に滞在することになったみたいなので皆んなは今からお父さんやお母さんに泊まっても良いか聞いて来ようねー!」

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