第291話私がその腐った根性を叩き直してやろうか
そこには隊長の口を止めた五人分の視線が明確な敵意を持って隊長を睨んでいた。
「………それ以上ご主人様の事を貶すような事を言うと………殺すぞ?」
その五人の中、唯一の奴隷であろう狐族の女性が隊長に喧嘩を売るかのような言葉を投げかけるのだが、その奴隷の女性は隊長の胸に視線が行っているのは気のせいだろう。
先ほどまで害魔獣の氾濫により緊迫していた空気は、今は別の理由で緊迫していた。
「よせアル。 それにお前達もだ。 どう考えても今回は俺の配慮が足らな過ぎた為の結果だ。 隊長殿も自分含めうちのものが場もわきまえず軽率な行動と態度を取ってしまい申し訳なかった」
「ですがご主人様!!」
「落ち着けアル」
「奴隷の躾も出来ないような奴は今回の戦闘に参加しなくて結構だ」
隊長はそれだけ言うと砦の中へ踵を返し入って行く。
隊長による一方的な暴力が始まるかと思えたのだが件の男性が頭を下げ、途中奴隷の女性が不満を漏らすのだが——それを隊長が受け入れる形とは言えないものの、それでもなんとかこの場は収まった。
◆
「全く! 全く! 全く! 何なのだあいつは! あんな枯れ枝の様な細い男性があの剣帝サラ・ヴィステンの男だと言うのか!?」
そんな訳無いだろう!! と誰も居ない寝室で声を荒げる。
それもその筈でサラ・ヴィステンとフレイム・フィアンマは昔からの冒険者仲間であり、この業界では数少ない女性友達なのである。
そんな彼女はいつも私に「理想の夫婦はトリステン夫婦であり、相手はもちろん自分よりも強い男性」だと耳が取れそうな程サラのたらればを聞いてきたのである。
だからこそサラが彼氏どころか夫とのたまった男性が、あの冴えない上に蹴れば折れそうなあの男性である。
それだけならまだしもあのクソ男はこの大事な時期、大事な場所で女と人目も憚らずにいちゃいちゃしやがってからに!
「しかも複数の女性を誑かしている上に奴隷まで! 性根が腐ってやがるんじゃ無いのか? この際だ! 私がその腐った根性を叩き直してやろうか!」
あの男性の事を考えれば考えるほど腹が立って仕方がない。
私ですらこれなのだ。価値観や自分の中の常識が似通っているサラに限ってあんな男性にキレるならまだしも惚れる筈がない。
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