第215話最も尊いお方


「ちょっと待ってよ君達。君達は僕と同じ種族、ヴァンパイアの主人がいるのかい?」


 そして目の前にいるセラ達をコレクションにしようと思っていたブラッドは既に彼女達が他人の、しかも自分と同じ種族であるヴァンパイアの主がいると聞きかつてない怒りが彼の中で更に膨れ上がる。


「あなた如きが私の主を気安く詮索しようとしないで下さい」


 しかしブラッドの言葉はセラによって軽くあしらわれ、まるで羽虫を見るような目で彼女達に見下された視線を注がれる。


「あなた如きがって、僕がヴァンパイアの中でも最上位に位置する真祖だって事を理解して言っているのかな?明らかに君達の主人より僕の方が格は上なんだけど」


 それでも必死に膨れ上がる怒りを抑えながら何とか答えるブラッドなのだが、次の瞬間セラ達が笑いを堪えようとするも堪えきれずクスクスと嘲笑いだす。


「クロ様よりも格が上ですってウィンディーネ」

「へー………あなたが……私達の主であると共に絶対強者の一人でありヴァンパイアの中でも最も尊いお方が、たかだか真祖程度の貴方がクロ様よりも格が上なわけないでしょう。笑かさないで下さい」

「私よりも明らかに弱いお前が……調子に乗らないで……」


 そして自分の主人である人物を見下されたセラ達の雰囲気はミセルやレイチェルですら恐怖を感じる程の怒りをはらみ、その怒りを言葉に乗せてブラッドにぶつける。


 そかし怒っているのはセラ達だけでは無くセラ達の言葉によりブラッドもまた先程までの雰囲気は変わり怒りで歪んだ顔をセラ達に向け睨みつける。


「こんなに気分が悪いのは初めてだよ。まさかこの僕が此処まで馬鹿にされるなんて……生きて帰れると思うなよこの糞アマァッ!」

「何を今更言うかと思えば……どうせ生きて返す気なんか無かったのでしょう?」

「黙れぇ!この僕のコレクションにしてやろうと思ってたんだがもう良い!!殺す殺す殺す殺す殺す殺すぅ!闇魔術段位六【生ける屍体】」


 ブラッドが魔術を詠唱した瞬間部屋の奥から数百の気配と唸り声、そしてこちらに近付く足音が聞こえ始める。


 そのどれもが死者とは思えない程の美しさを誇りブラッドの歪んだ趣味を見せ付けているかのようである。


 そんな中ウィンディーネの身体、そして身に付けている衣服が変化し、まるで神話に出て来る水の精霊を思わせるような美しい半透明な身体に変化すると衣服は青を基準に波を連想させるかのように波打つ豪華なドレスを着るウィンディーネの姿が現れる。

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