第214話春売り娘の成れの果て
その容姿は自分が知るスカーレット・ヨハンソン姫とかけ離れておりまるでスラム街の春売り娘の成れの果てと言われても疑わないだろう。
しかしその眼の中にはコンラッドのよく知る意志を絶えず燃え滾らせていた。
その眼は間違いなく彼女がスカーレット・ヨハンソン姫である事を確証させるに十分である。
「これから弟子に自慢話するところだったのに何話の腰を折っているんだよ!目障りだし臭いから死んでくれないかなぁっ!?」
「ぐぅっ!……うえぇっ」
そんな女性を見るや否やブラッドはその女性、スカーレット姫の腹部に手加減無しの蹴りを入れると彼女はその痛みで腹部を抑えながら血の混じった吐瀉物を吐き出す。その吐瀉物に食べ物の痕跡は見られない。
そしてブラッドはストレージからレイピアを出すと迷い無くスカーレット姫の頭部めがけて振り下ろす。
ま、間に合わない……っ。
その瞬間コンラッドが駆け出すのだがブラッドの一撃は鋭く彼の速さを持ってしても間に合いそうにも無い。
しかしその一撃はスカーレット姫に届くことは無く、代わりにその一撃を弾くほどの恐ろしい強度を誇る氷壁が現れ甲高い音が辺りに響く。
「…………誰だ?僕の邪魔をするのは?」
「光魔術段位二【癒しの光】」
「水魔術段位二【水の加護】」
「闇魔術段位三【闇眷属召喚・ダークネスドック】」
スカーレット姫への一撃を止められたブラッドは明確な殺意をその声音に乗せ周囲を見渡す。
ただそれだけの事なのだがコンラッドの意志と反し足が恐怖で竦みたちどまってしまうのだが、そんな中圧倒的なる強者から放たれる殺意を無視して魔術詠唱を紡ぐ三人の美しい声が辺りに響き魔術を発動させる。
先ほどの魔術はスカーレット姫の受けたダメージを癒し目の下のクマを消し燻んだ髪は元の黄金色を取り戻すと次の魔術でスカーレット姫を水の泡で包み、そして突如現れた円形の渦巻く闇から先程のマンティコア程の巨躯を持つ禍々しい怪物が這い出てくる。
「先程から黙って聞いていたのだけれど……」
「種族ヴァンパイアだというのに……」
「私達の主の顔に泥を塗る行為……」
そしてブラッドが放つ殺意ですら生温いと思えるほどの怒りが先程魔術を詠唱した三人の女性から放たれる。
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