第144話もちろんノックはなかった

そして誰かがこの部屋に来る気配を察知したアーシェは【デモンズゲート】を発動するとアーシェは帰って行き、代わりにクロがいる部屋が「バタンッ!!」と勢いよく開ける音が部屋を包む。


 もちろんノックはなかった。


「ク、クロッ!超越者のアル・ヴァレンタインと戦ったってのは本当ですかッ!?」


扉の方を目を向けるとサラが、ここまで走ってきたのだろう息を切らしながら勢いよく入ってくるとクロに詰め寄る。


「どこで聞いたんだ?」

「先程こちらに向かう途中に登校中のレニア達に会ったのですがその時にレニア達が興奮するように教えてくれたんですッ!」


フンスッとサラには珍しく鼻息も荒く答える。


どうやらサラはアル・ヴァレンタインのフアンなのだという。


「女性の冒険者の地位向上の切っ掛けを作ってくれた人ですし、何よりその容姿はむさ苦しい男性ばかりの冒険者界で目の保養になるんですッ!」


そしてサラはクロに質問されてもいないのにアル・ヴァレンタインについて語り出す。


ああ、これ完ぺきアイドルオタクの熱量だな……取り敢えずレニアに電話するか。


「ああ、そういう事だから。頼むな」

『わかりました!では放課後お待ちしております!』


ちょっと付き合いきれない熱量を即座に感じ取ったのでサラは無視するとしてレニア達にアル・ヴァレンタインと闘った事はタブレットで電話して他言無用だと伝える。


「まったく、ご主人様は女性の知り合いしかいないのか?」

「たまたまだ。だからそんな怖い顔するなよ」


 そしてサラの顔と容姿、特に胸を見て明らかに不機嫌な顔でアルが、アーシェがいなくなった事により身の危険が無くなり緊張が解けたのかクロの影に隠れる事をやめ気だるそうに伸びをしながらベッドから下りてくる。


 そしてそんなアルをサラが見逃すわけがなく最初こそ顔に喜色が浮かんだもののアルの服装、そして現れた場所、時間等が昨日ここでアルとクロとの間で何があったのか本人達に聞くまでもなく分かるその情景を目にし、サラの表情は怒りに満ちていくのだが、その怒りの根本はアルがクロに怪我されたからではなく、クロが昨日サラの知らない間に女を連れ込んでいたことだと、サラ本人は気がつかない。


「何私の断りもなく異性をこの部屋に上げてるんですか!?私聞いてませんよ!?」

「いやだって……」

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