第141話こんな辱めを受けたのはお前が始めてだぞ!
今までは少し歩いた所の小川まで早朝水浴びをしていたので暖かいお湯で身体を流すという行為の気持ち良さを久しぶりに思い出す事が出来た。
このバスルームなのだが一回の使用料は部屋代と別にかかるらしく2人分、銀貨2枚を先にターニャに渡している。
銀貨1枚が日本円で大体千円なので少し割高なのだが、まあ高過ぎるということも無いのでこんなもんだろう。
そして何故かアルがこの部屋に入ってから緊張しまくっており、とくに「バスルームで汗でも流してこい」と言ってからは聞き取れない声で呟き始め挙動不審になるも決心が付いたのか両頬を「ピシャン」と叩くと意を決したようにバスルームに入って行く。
単に風呂が苦手なだけだったのか……
と思っていたのだが、シャワーだけにしてはやけに長すぎる。
もう小一時間はかかっている。
何かがおかしい。
そう思うも何がおかしいのか、どこがおかしいのか検討も付かない。
大方お湯で身体を洗う気持ち良さに心身共に堪能しているのでは?ともっともらしい事を考えてもクロの頭に鳴り響く警告音はなおも鳴り響いている。
「しゃ、シャワーを念入りにかけてきた…ぞ」
そうこうしているうちにアルがシャワーを終え出て来ると寝間着である服の袖を両手で掴み、顔を真っ赤にしながら下を向いているではないか?
そしてアルは言う。
「ど、どうせ今からトギをするんだろ?後生一生だから、その……優しくしてくれ………始めてなんだよ」
「俺もだ馬鹿野郎っ」と心の中で毒呟きながらクロの背中から脂汗、冷汗が滝の様に流れ落ちて来る。
頭に鳴り響く警告音が警告している事を今やっと把握したのだが、確かにこれはヤバイ。
俺はノーマルでいたいのだ。
「そ、そのだな、今から俺がいう事をよく聞いてくれ」
そしてクロはアルの両肩に手を置き真っ青になっている顔に真剣さを滲ませアルの両目を射抜く。
「俺は男と交わる趣味は無い」
「……だけか?」
「え?何だって?」
「言いたいことはそれだけかって言ってるんだっ!」
そして何故か俺にブチ切れ出すアル。
何故いきなりキレ出したのか検討もつかないので狼狽えてしまう。
そんなアルの顔を見ると、その目には涙が溜まり、今にも雫となって零れ落ちそうである。
「た、確かに俺は言葉遣いは女性のそれではないし、それが関係してか男性よりも女性の方によく声をかけられるが……流石にこんな辱めを受けたのはお前が始めてだぞ!」
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