第131話PvP用の魔術

「言っただろう?彼女達には魔術五位下の底段位の魔術は効かないと。そして闘いにおいて先程の様な無駄な一手と言うのはそのまま死に繋がるのだが、ただ倒すのもつまらないと思わないか?」

「……貴様…一体何をしたんだ?」

「なに、君が無駄な一手を撃ったと同時に俺も空間魔術【闘技場】を使い、この図書館そのものを別空間の闘技場と変えたまでだ。この魔術はどちらかが倒れるか、降伏するかしないと消えないシステムになっている」


 薄々理解していたのだろう、アルは俺が説明してもあまり驚く事は無かったのだが、彼の表情は依然険しいままである。


「ちなみに、この空間そのものが魔術になっているため…………この用に物を壊しても元に復元され、さらに関係無い者は結界内に入る事も出来ないから他人に気を配る必要も無く存分に戦う事が出来る」


 そもそもこの魔術はプレイヤー全てがチュートリアルで覚える魔術であり、いわゆるPvP用の魔術である。


 その為結界内にいても対戦と関係ない者は観戦者とされダメージを与える事も食らう事も無いため観戦者として結界内に入ったレニア達に危害が及ぶ事はまずない。


「成る程、出来た結界だな」


 全ての説明を聞き終えアルは先ほどまでとはうって変わりどこか余裕めいた表情で不敵に笑う。


「何がおかしい?」

「だってそうだろう?お前は自らの手で俺を本気で戦える場所を作ってしまたんだからな、おかしくないわけ無いだろう?」


 そう言うとアルの身体が一瞬光り、次に目にした彼の姿は金色のとんがった狐の様な耳が頭に生え、さらに狐の様な尻尾が三本、腰から生えてきていた。


「流石にこの姿を公の場で晒す訳も行かないからな。人間の姿だと本来の力の半分も出せないからかなり焦ったが、大魔王とやらが間抜けで助かったぜ」

「お、お師匠様…彼はどうやら狐、それも強大な力を持つとされる種族の一つ、九尾の亜人種のようです…」

「は、早く逃げましょう…っ!」

「まだ尻尾は三本ですが神の使いとされる人種ですっ。逃げても恥では無いですわっ」


 そして本来の姿に戻ったアルの姿を見てレニア達三人は恐怖に怯え始める。



「いいから落ち着け。レニア、エリシア、ユーコは今から始まる対戦をタブレットを使って動画撮影する事。また、俺の戦い方を良く見ておく事。コレが今日の授業だ」


 そう言うとクロはレニア達を闘技場エリア外まで移動させ、観戦者エリアまで移動させる。

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