第25話 五人とひとりと古都の雅 4章
朝起きだすと比企はすでにおらず、ゆうべ言っていたように、建仁寺のえらいお坊さんと八坂神社のえらい神主さんに会いに出かけたみたいだ。朝七時前後、もそもそと起き出して顔を洗い、早朝の素振りを終わらせた結城や源も一緒に、布団をあげて着替えて、そうするうちに美羽子も身支度を終わらせて部屋から出てきた。比企が外出している以外は、昨日と変わらない。おいしいパン屋さんのライ麦パンのトーストにハムエッグ、サラダにポテトフライ、家で飲むよりちょっといいインスタントのコーンスープという献立を、さすが料理に関しては、このメンバーでは誰より手慣れた美羽子が、あっという間に作っていく。
関西ローカルのおはよう番組を見ながらお茶を飲み、その間に美羽子は手早く食器を片付け、源が洗い物を手伝い、あとのメンバーで手分けして風呂や通り玄関を掃除。ぼちぼち出発しようか、とコートやジャンパーに袖を通しかけたところで、比企が帰ってきた。
はーやれやれ、と比企は通り玄関の上り框に腰を下ろし、ただいま、と上体を仰向けに寝かせる。比企さんお茶飲む? と美羽子が声をかけるのに手を振って、ああ、いいんだ、と答えた。
「長老がたの朝のお茶に散々付き合ってきたから、今ちょっと茶っ腹なんだ」
「いきなり行って大丈夫だったん」
結城が訊ねると、比企はははは、と乾いた笑いで、
「いや、大丈夫とかいう以前に、境内歩いてるだけで若い坊さんだの宮司だのがすぐ来るんだ。貫主が待ってる権禰宜がお呼びだ、っつって、お茶でもどうぞが始まるんだよ。まあ、お陰で頼み事はスムーズに切り出せたけど」
とりあえず話だけは持って行けたからね、よかったよ、と比企はそのままでっかい欠伸をしながらグッと伸びた。
「決戦は大晦日の深夜。それまでに情報を集めて弾数を稼ごう」
またしても諸君に助太刀をお願いすることになってしまったな、と心底申し訳ないという表情で、比企はため息をついた。
「皆の安全のためには、打てる手はすべて打つつもりでいるが、どうかよろしく頼む」
起き直って上り框に正座し、指をついて頭を下げる。
「んもう、水臭いんだから」
いつものことだとぼんやり思った俺達より先に、美羽子がまったくもう、とため息をついた。
「そんなの、いくらでも手伝うに決まってるじゃない。旅行に行くずっと前、比企さんが危ないからって言ったときに、そんな覚悟してるわよ」
そこで俺も手伝うよと源が挙手した。
「笹岡さん一人に全部任せたりしない。俺も一緒に手伝うよ。笹岡さんは俺が守るから、比企さんも心配すんなって」
それに続いて、残る全員が俺も俺もと口々に賛同。
まったく、と比企は苦笑いした。
「貴君らのダイヤの魂は相変わらず健在だな」
それから笹岡さん、と美羽子に向き直り、
「本当に怖い、逃げたいと思ったら、いつでもすぐに言ってくれたまえ。あとのことは考えなくていい。心身ともに無事であることが最優先だからね」
そして大晦日の夜の大作戦に向けて、下準備が始まった。
昼間は俺達と観光して周り、夕方になると夕食の買い出しに行く俺達と別れて先に祇園へ戻り、商工組合の長老や置き屋の最年長女将さん達に面会して昔の話を聞き、という具合に比企は大忙しだ。その合間には、何に使うのか、お面だとか、平安貴族とか神主さんみたいな着物をどこからか借り出して、通り玄関の隅にまとめておいていて、何だこれ。
夕食と片付けが済んで、全員が風呂を済ませると、作戦会議だと言って、比企はわかったことを全部オープンにしてくれた。
「そんなことまで全部私達に聞かせちゃっていいの」
美羽子が気がかりそうに訊ねると、源がそっと、比企さんのやり方みたいだよ、と耳打ちする。
「手助けを頼む以上、仲間だから秘密はなしだって。みんなで同じ知識や情報を持っていなくちゃダメだって」
戦友に立場の上下があってはならないからね、と比企もうなずいた。
「指揮系統と立場の上下は別だ。立場に上下ができてしまえば、感情の対立が生まれて集団の破滅を招く。そういう組織を何度も見たよ。それに、」
私は事をなそうというときに、仲間にいらぬ隠し事をするのは好まない、と比企はお茶を啜った。
比企が作戦会議の場で明かした調査結果は以下の通り。
例の、置き屋の三代前の主人、新興宗教にハマった人物は、二階の奥の座敷に神棚を拵え、朝晩御神酒を捧げ手を合わせていた。奥座敷ってどの部屋だっけ、と見取り図を見れば、なんとこの前比企とお化けのマジカルバトルオンステージがあった、あの部屋じゃねえかよ。でも朝に比企とお札を貼って歩いたときには、そんな神棚なんかなかったぞ。
神棚が消えたのは、三代目が後継者に商売を引き渡したときだそうだ。
信心にのめり込んだ主人は、十年と経たないうちにすっかり商売を傾かせて、にっちもさっちも行かなくなって、結局置き屋を親類に、ただ同然で売り渡さざるを得なくなった。後を引き受けた親類がまずやったのは、水屋の天井の隅で埃をかぶっていた、先代以前までの神棚を清め、以前のように八坂さんのお札をいただき、先代がでっち上げた神棚を取り払い、ガラクタを他のゴミと一緒に回収日に出して片付ける事だった。祇園じゅうの同業者や商工会に挨拶回りをしてコネクションを蘇らせ、先代が手放した贔屓筋との付き合いを粘り強く呼び戻した。
当時、この置き屋にいた舞妓さんと知り合いだったという、祇園最年長の女将さんによると、代替わりしたばかりの頃、何度かおばけ騒ぎがあったらしい。
「だが、後を継いだ人物がなかなかに合理的かつ現実的な人間だったようでな、」
化け物など鼻毛の先ほども信じてはいなかったが、店に置いて働かせているのが、若い女性、それも半分がたは中学高校を卒業したばかりの女の子とあって、きちんと対策してしまう方がいっそ不安を鎮めるだろうと、八坂さんに頼んでお祓いしてもらい、戴いたお札を貼ったのだそうだ。以来、怪異はピタッと収まった。
そのまま何事も起こらなかったせいだろうか。お札や身上を傾けかけた主人については、誰ともなく忘れ、語られることもなくなり、代替わりのたびにお札はそのままにされていった。あってもなくても、誰も困りはしなかったからだ。ただし。
そのお札をいつ、誰がなぜ剥がしてしまったのか。最近のことではないとして、怪異はどうなったのか。忠広が訊ねると、たまにいるんだ、と比企は苺色の髪を掻きむしった。
「とにかく鈍感な人間ってのが、いるんだよ。実際に。どんな現象が起ころうと、まるで取り合わずに済ませてしまうタイプの人間が」
ある意味最強だし、怪異はそういう人間が何より苦手なんだ、と言って、比企は三条大橋の袂の煎餅屋で買ったあられを摘んで、俺達にもすすめた。
「徹頭徹尾相手にされず、自分が引き起こした現象を、完全に物理で対処粉砕されるからな」
確かにそんな扱いをされれば、人間だって泣くわなあ。
おそらくはそんな誰かが、後継者かその後か、いずれかの代のどこかの年代にいて、見栄えがよろしくないとか、そんななんてことない理由で剥がして、その後何かしら起こってもさして怯えもせず、虫が湧けば駆除し、家具や梁がガタつけば、楔を噛ませたり固定したりして、徹底的に物理で対処してしまう。そうやって怪異は無視され、どんどん萎縮して、希薄な存在になってしまったのだろう。
そして時代は移り、この建物は女将さんが買い取って、新しい住人がやってきて。
だけど、新しい住人はかつての人間のようには敬わず、ただただ怯えて忌み嫌うばかりだった。
「奴さんは今まさに、不満と困惑の真っ只中だろう。そこで、」
私の作戦の大枠はこうだ、と比企は、泉翠の女将さんか帯師のお兄さんにでももらったのだろう、でっかいカレンダーの裏を座卓に広げて、話しながらペンでゴリゴリと書き始めた。
「まずは奴を二階から引きずり出す」
「できんのかよ、そんなこと」
まさやんが疑問を発すると、できなくはないと比企は即答。
「あれが居着いているのは、脅威になるものがいないからだ。ならばおそろしいものが来たのだと思わせれば、すぐに逃げ出す」
「叩き出せればこっちのもんか」
俺がなるほどとうなずくと、そうはいかないぞと比企はたしなめた。
「京都には平安からこちら、幾重にも結界が張り巡らされている。結界の中に結界張って、それがマトリョーシカみたいに延々続いてるんだ。そんな中にあんなものを放り込んでみたまえ、ただのちからの塊に厄介な形が備われば、対処はもっと困難になる。だから、」
叩き出したらすぐに形を与えなくてはならない、と比企は肩を揉んだ。
「どんな形にするんだ? 」
のほほんと結城が質問。そうだな、と比企はため息をついた。
「大晦日だ、最初は
うっかり追儺の形を与えてしまえば、毎年一二〇人も人を集めなくちゃならないのが骨だ、と言って、比企はバサバサとコピー紙の束を出した。
「ひゃくにじゅうにん? 」
驚く忠広に、追儺式は節分の原型になった年中行事だ、と比企はレクチャーを始めた。
「
はー、とため息で相槌を打つ俺達。確かにそんな人数が必要な儀式は、二日三日ではいやりましょう、なんてわけにもいかないよなあ。
「まして相手は、一時的にとはいえ神と崇められた相手だ。一時の栄光に縋り付くのは人間以上、そんなものを祟りや穢れとして扱ってみたまえ。不満に思う恨みは桁外れだ」
私はどうにか円満に解決したいのであって、新しい災いを生むのは真逆の結果でしかないだろう、と比企は座卓の中央に置いたあられをつまむ。
「祟り神なんて厄介なばかりだ、ごめん被るよ」
「それじゃあ、比企さんはどんな形を作ってあげるの」
美羽子がそっと挙手した。いい質問だ、と比企は指を鳴らし、コピー紙を掻き分けてお目当てのものを掘り出した。
「そこでこいつだ」
「なにこれ」
源が首を傾げる。
「太秦は広隆寺境内、大酒神社の秘祭。牛祭りだ」
コピー紙には、平安時代みたいな衣装にケッタイなお面の人が、一人は白い牛に乗り、四人がその四方を囲んで歩く絵がプリントされていた。
「
なんか聞いたことのない神様? の名前がいきなり出たけど、その辺はもうほら、比企の専門分野だから、俺達はそんなもんなのかと聞いている。
それで、と再びまさやんが訊ねた。
「俺らは何をすればいいんだ」
比企は質問にうん、とうなずくと、諸君にはこれをお願いしたいんだ、と言って、お面の平安貴族スタイルを指さした。
「牛は私が手配するので心配ない。貴君らにはまた面倒をかけ、笹岡さんには怖い思いをさせてしまうかもしれないが、できる限り、リスクは私に集中するよう取り計らう。どうか、よろしく頼む」
そう言って心底済まなさそうに詫びる。別に怖い思いとかは、比企のことだから全力で対処してくれるのは、初夏からの付き合いでよくわかってる。そこに不安は鼻毛の先ほどもない。
でもさ、これどうすんの。牛。
ここで唐突だけど、俺による俺の頭の整理のため、比企が実践すると言い出した「牛祭り」の解説を少々。
えーと、そもそものスタートが、三条天皇の頃…って何時代ですか。
「平安時代」
だそうです。比企と美羽子によると。
そのころに、比叡山のえらいお坊さんがお経あげてたら「それ絶対絶やしちゃダメよ」と神様からお告げがあったので、それならもっとガチで後世に残るようにしよう、ってんで、次の日に御祈祷の文句を書いて、「この神様まじでゴイスーなのでドーンと祀ろうZE☆」ってやったのが始まりなのだそうな。このお告げをしたのが摩多羅神って神様で、お坊さんが書いた文句を現代語に翻訳すると「この神様はガチですげえので災いは鼻毛で祓うし世界平和は実現するし、平均寿命は伸びまくってみんなホカホカ暮らせるよ! 」という感じみたい。
このお祭り行事をやるのは、お坊さんがお告げを受けて御祈祷の文句を書いたのと同じ、旧暦だと九月一二日だったそうだ。明治になって暦が変わると、一ヶ月ずらして一〇月一二日。だけど、時代とともにどんどん開催が難しくなって、ついに不定期開催となり、もう一〇〇年近くこのお祭りは行われていない。
なんとなれば、この行事には、牛が欠かせないのだ。
比企が見せたあの絵でわかるように、行列には、お面をつけた一人が牛の背に乗り、あとの四人がそれを囲んで、更に松明を持った従者がついて、夜に練り歩くというので、そりゃあハードル高いよな。お寺とはいえ住宅街の中で牛。それも夜。えーと、戌の刻ってこのプリントにあるけど何時だ。
「午後八時から十時だな」
オッケーありがとう比企さん。まあ、人通りはまだまだある時間帯だし、さあやりましょうと言っても、まず牛を連れてくるまでがすごい難しいよね。そりゃあ廃れるわ。もうちょっと難易度の低い、お散歩わんちゃんとかなら時代問わずいけただろうに。
で、こうして現代ではメチャクチャハードルの高い行列で、文献によると広隆寺の本堂傍から後ろを周り、西側から祖師堂の前の壇上で、例の、この神様まじマーベラス的な御祈祷文を読むのだそうだ。
京都のお寺、大晦日、となると、俺達が実行しようという即席牛祭りも、やるとなるとハードル激高いんじゃないの?
日付が合ってないという点については、成り立ちがああなら、さほど問題じゃないだろう。お坊さんが「神様まじやべー! 」ってなったタイミングで始めただけだし。だけど大晦日の夜という、初詣待ちの参詣客が集中し始める日にちと時間だ。どうしたって目立つし、混雑で何もできなかったり、下手すれば通報されたりしかねない。作戦の性質上、ぶっつけ本番の一発勝負、失敗は許されないだろうし、どうするんだ? それに、まずこの行列に欠かせないのであろう牛は、一体どこから連れてくるのか。
俺やだよ。丹波牛の牧場から、ルパン三世一味よろしく牛一頭誘拐するの。ほら比企はそういうことやりそうだし。こええよなあ。
とりあえず、実行の際の分担は、松明持ってついて歩く従者は美羽子と源。俺と忠広、結城とまさやんは、お面をつけて牛の前を固めて歩き、牛の背に乗り、最後に壇上で御祈祷文を読むのは比企が受け持つ。牛の周りを固めるのと背中に乗るのと、この五人は五尊の形をあらわすとかなんとか、難しいっぽいけどね、昔は広隆寺のお坊さんがやってたらしい。
作戦の決行は日没と同時。二階のあのお化けを、頭ぐるぐるになるぐらい怒らせて誘き出し、太秦へ向かって、夜八時に即席の牛祭りを執り行い、強引に「摩多羅神」として祭り上げてしまおうというのが目的だ。
三条大橋で会った水月さんは、手に負えなかったらなんて言っていたが、太秦と聞いてこの作戦を思いついたのだと、比企は言った。
「最後の手段にするぐらいなら、最初に最大有効打として打てばよかろう。それで目標が達成されるなら、そのあとに消費することになる時間も資金も労力も節約ができる。いいことづくめではないか」
こんなところまで徹底して軍人肌なのは、ああ、比企だな。とね、思うわけですよ。夏休みの怪獣退治と同じことを言ってる。
「水月さんはここで祓えるなら祓って、と悠長に考えていらしたのだろうが、まあ、あの方は極限状況を体験したことのない一般人だ。その場で即座に、可能な限り長く状況をよい形で固定できる手段を取らなくてはいけない、なんて、戦場でもなければそんなところへ追い込まれることはそうないだろう」
あいにく私はそういう状況しか知らないからな、最大火力で最大効果を得る方が性に合っている、と比企は携帯端末を出して、どこやらへ電話をかけ始めた。
そして大晦日前夜、一二月三〇日の朝。
「梅ちゃん、ちょっと」
妙にご機嫌でちょっと意味ありげに微笑む女将さんに呼び出され、千翠の置き屋の棟に顔を出した比企は、十分も経たぬうちに戻ってきた。
頭を抱え、苺色の髪を掻きむしるその隣には。
「やあ」
桜木さんがにこやかに手を振り立っていた。
まじかこの人!
驚愕する俺達に、桜木さんは上り框へ腰を下ろし、ただ追いかけてきたわけじゃないからね、とケラケラ笑った。
「千翠の女将さんから事情を聞いたのと、京都市警から公社経由で問い合わせがあったもんだから、いっそ僕もこっちに来ちゃえばサポートしやすいだろうと思ってね」
なるほど確かに。
しかし、警察から問い合わせって何をやらかしたんだ。そう思って比企を見れば、大晦日のあれだと、げっそりした顔で答えた。
「最悪の事態を想定して、例の調伏作戦で想定される移動ルートや目的地、詳細を事前に報告しておいたんだ」
さすが、抜かりがないな。だけどいくら国際的な観光都市にして学術都市であるとはいえ、市警察の署長さんからすれば、いきなりアポなしでマル勅探偵がやって来て、唐突に街中で仕事をするからよろしくとか言われて、どんな人間なのか気になったのだろう。東京の探偵公社や警察庁に問い合わせたのも、そりゃあ無理ないよ。比企は、署長さんが問い合わせたことに対しては不満はないみたいだが、それをいいことに桜木さんが来たことにげんなりしているのだった。
「君が動けば僕のところに連絡が来るのは当たり前でしょう」
諦めなさいと桜木さんはたしなめた。
「小梅ちゃんには色々言っておきたいことがあるけど、今は目の前のトラブルだね。役所への折衝は僕が引き受けるから、まずは詳細を聞かせてくれるかな」
保護者の顔から、すっと相棒のそれに変わると、桜木さんはキャリーを座敷に引き揚げ、座卓についた。
そして始まる、再びの作戦会議。その結果、俺達の分担は変わらず、桜木さんが牛の轡を引いて歩くことになった。なんとしてでも比企に張り付くこの根性、さすがだな。とはいえ、実際のところ危険度は高いだろうけど。
前段階のお化けを追い立てるところは、ごねにごねて粘り勝った俺と、桜木さんがサポート役として比企と行動を共にすることとなった。結城や忠広、まさやん、源は、美羽子と一緒に広隆寺で待機だ。
ゼロ・アワーまで一日半。桜木さんも加わって、俺達は観光を楽しむことにした。今日はのんびり下鴨から一乗寺。糺の森を歩きながら、それとなーく源と美羽子、桜木さんと比企から距離を取り、額を集めてボソボソ密談する俺達残り四名。
「あのさ桜木さんてさ、水月さんの存在知ってると思う」
「さあ」
「もう知り合いだったら心配ないけどさ、名前出したらやばくないか」
「んー」
「あんまり触れない方がいい気がするんだけど」
「確かに」
とりあえず、水月さんについては特に触れずに済むならそうしておこうと決定。あの人、飛び抜けたイケメンってわけではないけど、なんかいい人オーラすごいし、女子に安心感を与えるタイプではあるからなあ。比企とは昔からの知り合いみたいだし、桜木さんが臨戦態勢に入りかねない。そして俺達は、そんなギスギスな旅はしたくない。
なんか俺ら、いらないところで苦労してないか。そう考えると可哀想だな!
よし、こうなったら本気で京都じゅうの神様に、かわいくておっぱいのでっかい女の子との運命の出会いを願おう。俺は密かに決意して、訝しげに立ち止まり俺達の方を見ている比企に向かって、何にも考えてませんよ、という振りで歩き出した。
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