第13話 約束の場所で
一方、チェイスはと言うと。
シェリルを探していた。
愛している。と伝える為に。
クラウディアに着くと、酒屋で飲んだくれていたギルバートと出会した。
「おおっ!チェイスじゃねえか!どうかしたか?そんな急いで」
「シェリル、どこにいるか・・・知らない?」
「ああ?あのチビなら、ベソ掻きながら森の方へ消えていったぜ?」
チェイスは、それがけ聞くと何処に行ったか検討がついた。
「サンキュ!!」
「なんなんだ?アイツは。オレは、リアムの様子でも見に行くかな」
チェイスは、急ぎ森の中へ入って行った。
リルは、きっとあそこにいる!!!!
昔、よくかくれんぼに使っていた廃墟の工場があった。
そこは、初めてチェイスがシェリルに傷を負わせてしまったところ。
シェリルは、よくその工場の屋上でクラウディアの夕陽を眺めるのが好きだったと言っていた。
きっと、あそこにいる。きっと・・・オレを待ってくれている。
工場前に着くと、軽く息が上がっていた。
工場の階段を一段一段上がっていくと、よくここでオリビアとシェリルとでおままごとや、かくれんぼ、鬼ごっこをした記憶が蘇る。
恐る恐る屋上の扉を開けた。
屋上の先には、小柄の少女がポツンと立ち夕陽を見上げていた。
「リル・・・」
自分でもビックリするくらい小さな声で、彼女の名前を呼んだ。耳が良かっシェリルは、ゆっくり振り向いた。
「チェイスくん・・・?」
大きい瞳を真ん丸くして、彼女はチェイスを見つめた。
「そんなに体乗り出してると・・・落ちるぞ」
第一声がそれしか思い付かなかった。
その言葉を聞くと、少し拗ねながらプイッとチェイスとは別の反対方向を向いた。
「チェイスくんには、関係ないでしょ」
「リル・・・」
「子供扱いしないで」
チェイスは、勇気を振り絞り一歩一歩シェリルに近づく。
「私だって、立派な女なんだから!もう、こうなったら色んな男性とお付き合いしてチェイスくんなんかより幸せになるんだから・・・。チェイスくんなんか忘れてやるんだか・・・ら」
チェイスは、シェリルが泣きだ出したタイミングで最後の勇気を振り絞り彼女を後ろから抱きしめた。
「忘れないで・・・」
「チェ、イスくん?」
「オレ・・・キメラだし。魔の国の住人だし・・・。素直じゃないし、喧嘩っ早いし、リルのこと悲しませてばっかりだけど・・・」
言え。言うんだ。
「リルの一番になりたい。リルを一番笑わせて、喜ばせて、宇宙一幸せにしたい」
「それって・・・」
シェリルは、チェイスと向き合いポカンとした表情を浮かばせた。
「リル・・・これからのオレの短い人生に付き合ってくれる?リルのこと・・・愛してるから。オレの隣でまたいつもみたいにずっと微笑んでいてほしい・・・最後まで」
チェイスは、跪きシェリルの手を握った。彼の手は、少し震えていた。
「オレと結婚してください」
シェリルは、信じられなかった。
ずっと、欲しかった言葉を彼が言ってくれたから。
「私で、いいの?」
「シェリルじゃないと…オレは、嫌なんだ」
涙ぐむシェリルに、チェイスは立ち上がり抱きしめた。
「待たせてごめん」
その言葉をシェリルは、どれだけ待ったことか。
「ずっとずっと一緒だよ…約束だよ」
その時だった。
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